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5年前



―Aside―





杏「誰にもAを殺させはしない」




消えゆくその刹那まで美しい炎は、

やはり彼そのものだと悟る。




鞘に眠る刀を握った彼は、

そう言って私に笑うのだ。





全ての炎が消えた頃、

彼は夜風に舞うように

その背を私に向けた。




羽織の隙間から覗いた「滅」の文字。





『―炎の呼吸。

  弐の型―』




抜かれた炎刀は、

たちまち彼の瞳の如く

赫く光る。




余熱と北風の中で躍る蜃気楼で

迫り来る鬼が歪んで見えた。




『―昇り炎天』





凄まじい速度で

鬼との距離を縮めた彼の刃が

鬼の胴体を真二つに切り裂く。




地面から空に向かって

円を描くように炎は上がる。




彼の勝利かと安堵したのも束の間、

鬼の身体は急速に修復される。




A「!?」





信じられないほど速度で

鬼の身体は接続し、一つの胴体に戻るのだ。



この世のものとは思えぬほど

悍しい光景である。




回復した直後、

鬼は待った無しで快進を始める。



奴の鋭い爪が

目では追えぬ速さで

彼の右腿の皮膚を引きちぎる。





竹林と、

その中で飛び散る

鮮やかな血のコントラストに、


私は自分の心臓が一瞬止まるのを

感じた。





右腿の痛みによろついた杏寿郎は

そのまま竹の上に飛び上がって

視界から消えてしまう。





竹の葉が擦れ合う音だけを頼りに

下弦の月に目を眩ませながら、


私は、竹の上の彼を見上げる。






葉の隙間から見える、

彼の右腿からは

隊服の外に溢れるほど多量に

流血しているのがわかる。





初めて見る血の量に

自分の右腿まで痺れるような感覚に襲われる。





A「っ……」





竹の葉に隠れて

一人呼吸を整える彼を前に、


私は声一つあげることもできなかった。






『―壱の型、

  不知火…!!』





彼は一点を見つめたまま

決して集中力を切らすことなく、


そのまま鬼の元へ飛び降りていく。





彼の肩に担がれた刃は炎を纏い、

そのまま鬼の頸を目掛けて

振り下ろされた。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 宇髄天元   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:わたあめ | 作成日時:2021年5月4日 20時

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