2 煉獄家の女中が鬼殺隊に入らない理由【煉獄杏寿郎】 (ページ34)

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―Aside―

千寿郎が磨いてくれいていた鎖武器を右腿に縛り、

シルクに光る、動き易い白色の着物を見に纏う。

髪が下ろされていることが確認できたら

ようやく、青い鼻緒の目立つ草履に足を通す。

それが私の戦闘前のルーティンであった。

杏「この頃稽古をつける時間がなかったが、

　体の調子は整っているだろうか」

30分ほど無言で走り続けた後、

杏寿郎が口を開いた。

私たちの真上には、杏寿郎の鎹鴉と私の鎹鴉が

私たちを見守るように飛んでいる。

私は何度も言うように鬼殺隊には所属していないので、

本来は鎹鴉になれない白色の鴉を

あまねの御好意で頂いた。

白色の羽と真っ黒な瞳のコントラストが美しい

頭脳に優れた鴉である。

もう5年も私に尽くしてくれているので

それなりに愛着も湧いてくるものだ。

そんな鴉たちの飛ぶ様子を伺いながら

杏寿郎に返事をする。

A「正直少し訛っているかもしれません。

　足を引っ張らぬよう努めます」

杏「案ずることはない！

　君が故意的に鍛錬をサボったわけではないことは知っている。

　誰にでも体調には波があるものだ。

　今日は俺が補填しよう！」

優しい彼の言葉に感謝しながらも、

私がその言葉に心から微笑むことはない。

 
 
確かに未だ彼の実力の足元にも及ばない。
 
 
しかし私はあの頃より確実に強くなった。
 
 
 
私は彼を守るために強くなったのだ。
 
 
 
彼に守られるためでも、
 
罪のない一般市民を守るためでもない。
 

 
 
 
急に低空飛行に切り替えた私の鎹鴉が
 
私の頬に優しく頭を擦り付けてくる。
 
 
 

 

夕日が視界を遮る。

夜闇はすぐそこまで来ていた。