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ーAsideー
槇「近々、話がある。
杏寿郎と千寿郎にも伝えておけ」
彼の言葉に再度返事した後、
私は廊下に出る。
濡れた前髪を袖で拭った。
槇寿郎には冗談抜きで感謝している。
身寄りのない私を、10年前
女中としてであるが、屋敷の主人として受け入れたのは彼だ。
このような扱いを受けることは
今に始まった事ではないし、
この状況を知る宇髄や蜜璃らに
どれだけ屋敷を出て行くように何度も勧められても
私は丁寧に断ってきた。
私に向けたものではないが、
槇寿郎が息子二人への愛情を見せることは
少なからずあるのだ。
私はそれを見逃さず、隣で拝見してきた。
杏寿郎が言うように、
彼は今はああだが、
根は杏寿郎に似通った何かを持っているに違いないと
私は確信していた。
そんな槇寿郎だが、ここ三月ほど、
よく屋敷を空けるようになった。
どこへ足を運ばせているのかは
本人が口を割らないので
誰も聞かず終いになっていたが、
彼の『近々、話がある』と言うのが
全ての答え合わせになるのだろう。
台所の戻りながら、私はそんなことをぼんやりと考えていた。
彼が頻繁に出かけることは、
瑠火の死後初めてのことだった。
大抵いつも昼過ぎに
部屋着のままふらっと門を出ると、
日が沈む前には必ず屋敷に戻ってくる。
話があると言うからには
少なからず私にも影響があるということ。
あまり気にしたくもないが、
心の片隅が騒めくのを私は止められなかった。
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作者名:わたあめ | 作成日時:2021年5月4日 20時