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5年前


―Aside―




それからというもの、

物事が進むのは早かった。



事態は恐ろしい速さで

変化した。



結果から述べると、


杏寿郎は数日間、生死の境目を彷徨ったが


私が手に入れた薬の下、

どうにか息を吹き返した。





不幸か幸運か、

その解毒剤の強い副作用は、


彼は任務決行日前後の記憶を

全て奪い去った。




しかし、本人を見れば

そんな数日間の記憶の欠落は、


さほど問題ではなさそうだった。






何より、あのファーストキス未遂事件のことも

闘いの最中に交わした情熱的な言葉の数々も全て、


綺麗さっぱり忘れてしまったようで、





…それが私たちにとって酷く都合が良かった。








A「杏寿郎さん、私に剣を教えてください」




彼の復帰直後に伝えた、私の言葉。





彼への恋心も、

以前までの甘い考え方も、

その全てに蓋をした私は


剣を握る決意を述べた。







弱いままでは

何も守れない。


彼を止められない。





彼が意識を戻さなかった数日間の恐怖を思い出して

私は剣を振り続けた。



とにかく剣を振り続けた。






タメ口を使うこともやめた。


彼に泣きつくこともやめた。


可愛子ぶるのもやめた。





血の出るような努力もあってか、

剣を握ってからわずか一週間で

日輪刀が赤へと変色した。



奇跡だと思った。





それから時間が経つごとに

それはもう迷いなく、


ただただ真っ直ぐに

それでいて単純に、



私は強くなった。





それと同時に

まるでもう二度と塞がらない穴が空いたように、



私の心と彼の心は、どんどん遠ざかっていった。





少しの時間の記憶を失った彼は、

生き方を180度変えた私に対して


何も言わず

ただただ剣術を教えてくれた。


変わらずそばに居てくれた。




腫れ物扱いもしなかったし、

真相を確かめようともしなかった。





…あの日のように

熱に犯 された視線で私を見つめることも


二度となかった。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 宇髄天元   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:わたあめ | 作成日時:2021年5月4日 20時

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