2 煉獄家の女中が鬼殺隊に入らない理由【煉獄杏寿郎】 (ページ12)

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5年前

ーAsideー

杏「Aの髪を奪ったこと、

　この煉獄杏寿郎が許さない」

 
 

張り付いたような彼の笑顔は
 
そのまま真っ直ぐに鬼へと向けられる。
 
 
 

私はこの時もまた、

彼にしがみつくことしかできなかった。

 

聴き慣れた鬼の雄叫び。

 

それと同時に

鬼は勢いよく飛び上がる。

『―炎の呼吸、奥義』

彼の声を耳元で聞いた時、
 
鬼は迷いなくこちらに牙を向けた。
 

 

しかし、
 
その牙の矛先は
 
杏寿郎ではなく、私だった。

 
A「！？」

杏「！？」

この鬼の動きは

杏寿郎にとっても想定外だった。

 

彼は咄嗟に

両腕で私の頭を庇うように包み、

そのまま私を胸に閉じ込めたまま

鬼に背を向けた。

私を庇った彼の背中に

鬼の爪がめり込む音が聞こえる。

 

血肉が切り裂かれる、
 
鈍い音だった。

杏「ぐっ…」

それでも彼は一切体制を崩す事なく、

私を庇ったまま

もう一度体を回転させる。

鬼と正面で向き合う。

『―仇の型、煉獄！！』

舞い上がった彼の炎は真っ直ぐに

鬼の頸に刺さる。

切り落とす。

闘いの最後に血飛沫を上げたのは

鬼だった。