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5年前







ーAsideー




トタトタと小走りで

瓶に入った重い酒を幾つか両腕に抱えながら

私は台所へと渡り廊下を突っ切る。





足音に気をつけているのは、

槇寿郎に怒鳴れることを危惧しているからだ。





渡り廊下を走ることは

確かにはしたない。




現に、杏寿郎や千寿郎が走っている姿を

私は見たことがない。




良家に生まれたことを自覚してか、

彼らは本当に品があると

私はここに来てからしみじみと感じている。






…それでも私は走らざるを得ない。


それでなければ、

こんなに重たい瓶をいくつも運び切れるはずがない。



急いで戸棚にしまわなければ、

私の腕が切れてしまう。




そんなことを考えながら、

私は滑り込むようにして台所へ入った。





槇寿郎のお酒を飲むスピードに半ば感心しながら、

私は空になった戸棚に

運んできた酒を並べ納める。





杏「A」


その声と共に、目の前をある紙が舞う。




酒から手を離して振り返れば、

そこには隊服姿の杏寿郎が立っている。




杏「今から発つ。


  昼寝をしている千寿郎には、

  よろしく伝えてくれ」




その言葉を右耳に、

私は足元に落ちた封筒らしきものを拾う。




状況を理解して再び彼を見ると、

彼は少し照れ臭そうに

腕を組んだまま笑っていた。





杏「本当はもう随分と前に書き上げていたが、

  長期任務前に渡したかったんだ」




私はいつもより厚い便箋を、

強く握りしめる。




この頃までの私たちは、

よく文通をしていた。



きっかけは彼の初めての長期任務であった。



最初は安否を確認するだけだったものの、


子供の頃から読み書きをすることが好きだった私が

徐々に日記のような内容を記し始め、



彼の帰還後もその文通のやりとりは続いていた。





彼が任務に行っている間に

千寿郎と二人で茶菓子を作ったこと。



彼が鍛錬をしている昼間に

一人で繁華街に出かけたこと。




そこで食べた西洋の料理が

おいしかったこと。





そんなことを、当時は互いに

この薄い紙を通して共有していた。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 宇髄天元   
作品ジャンル:恋愛
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まるまるもりもり(プロフ) - さねみん推し(だが渋い槇寿郎も好き)さん» たしかにそうですね!そうすぎますね!!!!!書き直させていただきます!的確なご指摘本当にありがとうございます(TT) (2021年3月14日 11時) (レス) id: 1253c02f70 (このIDを非表示/違反報告)
さねみん推し(だが渋い槇寿郎も好き) - すいません・・・「エピローグ」の所、物語の最初なので「プロローグ」の方がいいんじゃ・・・(^_^;) (2021年3月14日 6時) (レス) id: ff085d1bee (このIDを非表示/違反報告)
まるまるもりもり(プロフ) - 凪子さん» 凪子さん、素敵なコメントありがとうございます^ ^ そうですよね!煉獄さんは身分差は気にしない素敵な人ですよね(*^^*) 凪子さんにもっと楽しんでいただけるように、頑張ります!! (2021年3月13日 23時) (レス) id: 1253c02f70 (このIDを非表示/違反報告)
まるまるもりもり(プロフ) - 衣世さん» 衣世さん^^コメントわざわざありがとうございます!とても嬉しいです(^-^)ハッピーエンドになるように頑張りますね!! (2021年3月13日 23時) (レス) id: 1253c02f70 (このIDを非表示/違反報告)
凪子(プロフ) - 身分の差…煉獄さんは気にしないと思いたいです!展開を楽しみにしています(^^) (2021年3月13日 8時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わたあめ | 作成日時:2021年3月12日 20時

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