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-Aside-


私に釣られて微笑む彼の手が、

優しく私の髪を撫でる。



懐かしい感触。




染み付き始めた上下関係は、

徐々に体内を支配して

懐かしい記憶を奥底に塞ぎ込めようとする。




それを引っ張り出すのは、いつも彼の暖かい手だ。




杏「この頃働き詰めてはいないか?

  弱音を吐いてくれないと心配になる」




そんな彼の一言一言に、

私の凝り固まった心は

言うまでもなく溶かされていくのだ。





彼の部屋から繋がる縁側。




ここはずっと、私の逃げ場所だった。



女中という低身分であることを

忘れさせてくれる魔法の時間。



楽に呼吸ができる空間。





杏「それから」


A「っ?」





黙ったまま彼の声に酔いしれていると、

彼が再び真剣な眼差しで

私の腰に腕を回してくる。





杏「君の傷の具合が気になって、

 近頃は夜も眠れない」





辺りが随分と暗かったこと。

満月だったこと。



彼の体のあちこちから、

私好みの石鹸の匂いがしたこと。




それだけだった。

それだけの理由だった。




私はその場の雰囲気のせいで、

なんとなく彼に私の傷口を見せることを

許してしまったのだ。





するりと帯がお腹周りを撫でて、

彼の手のひらに吸い寄せられていく。





春物の寝巻きなので、

布切れ一枚状態であることは彼も知っているはずで。





彼の場合、下心のかけらもない人なので、

ただただ本当に傷口を診察したいだけなのだろうが、


妙に私の体だけが火照る。





右胸の横から脇腹を通り、

そこから腰にかけて尻上までの創傷だ。





鬼の爪に、0.5cmほど切り裂かれただけなので

傷口さえ塞がってしまえば

特に問題はなかった。





しかし、その傷に沿って

彼の熱い指が優しく身体中を滑るので

息も絶え絶えになる。





妙な声が出てしまわぬように、と

息を殺しながら

私は彼の腕に抱かれるのだった。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 宇髄天元   
作品ジャンル:恋愛
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まるまるもりもり(プロフ) - さねみん推し(だが渋い槇寿郎も好き)さん» たしかにそうですね!そうすぎますね!!!!!書き直させていただきます!的確なご指摘本当にありがとうございます(TT) (2021年3月14日 11時) (レス) id: 1253c02f70 (このIDを非表示/違反報告)
さねみん推し(だが渋い槇寿郎も好き) - すいません・・・「エピローグ」の所、物語の最初なので「プロローグ」の方がいいんじゃ・・・(^_^;) (2021年3月14日 6時) (レス) id: ff085d1bee (このIDを非表示/違反報告)
まるまるもりもり(プロフ) - 凪子さん» 凪子さん、素敵なコメントありがとうございます^ ^ そうですよね!煉獄さんは身分差は気にしない素敵な人ですよね(*^^*) 凪子さんにもっと楽しんでいただけるように、頑張ります!! (2021年3月13日 23時) (レス) id: 1253c02f70 (このIDを非表示/違反報告)
まるまるもりもり(プロフ) - 衣世さん» 衣世さん^^コメントわざわざありがとうございます!とても嬉しいです(^-^)ハッピーエンドになるように頑張りますね!! (2021年3月13日 23時) (レス) id: 1253c02f70 (このIDを非表示/違反報告)
凪子(プロフ) - 身分の差…煉獄さんは気にしないと思いたいです!展開を楽しみにしています(^^) (2021年3月13日 8時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わたあめ | 作成日時:2021年3月12日 20時

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