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個体差 ページ2






政府の人の案内の元、私は政府から本丸へと続くゲートを通って、私が形式上ではあるけれど審神者となった本丸に向かった。
その道中、私はその人に、聞く事にした。
何をかって?そんなの勿論、私が行く先にある本丸に一人で居るという、鶴丸国永の事だ。



「そこに居る鶴丸って、なんで一人で居るんですか?
あの人は、退屈を何よりも嫌う人、だと私は認識しているんですけど」


「…個体差って、ご存知です?」


「まぁ…。研修中に、刀剣男士にも個体差があるって習いましたから」


「今から行く本丸に居る鶴丸国永は、個体差が他より顕著で…まあそういう事です」



要は、退屈が然程嫌いではないという事なのだろうか。
刀剣男士は、自身を顕現させた審神者に似ると言う。だから本丸によって個体差が生じる訳だけど。


この時の私は、穴があったら入りたい程に、呑気だった。あまりにも呑気過ぎた。
いや、でも、だって、仕方ないと思う。政府の人の説明があまりにも雑だった。





そんな話をしているうちに、気が付けばゲートを抜けて、本丸に着いていた。
政府の人が案内出来るのは本丸の敷地内に入る迄で、一歩でも私が入ってしまえば、そこで政府の人の案内は終わりだ。
そこからは、私一人。


最後にここまで案内してくれた政府の人へ頭を下げてから、私は本丸へと足を踏み入れた。
足を踏み入れて、目の前に広がる光景に、私は驚いた。
とても、綺麗だ。本丸は亜空間にあるらしいけれど、現世に季節を合わせているのか、桜が満開に咲いている。


研修中に、噂程度で聞いた事がある。
審神者が、自身が顕現させた刀剣男士達に手酷い仕打ちを行う、ブラック本丸の存在を。


だからてっきり、そうだとばかり思っていた。
だってそうだろう。どんな事情があるかは知らないけれど、鶴丸国永がたった一人で顕現している本丸だ。
そう思っても仕方ないと思う。
まあ、こうしてその考えは裏切られた訳だけれども。





そんな事を考えながら本丸の庭を歩いていると、人の存在を見つけた。
その姿に、私は動かしていた足を、知らず止めていた。


政府の人が言っていた話では、この本丸に居るのは、鶴丸国永、ただ一人の筈だ。
私が知っている鶴丸国永の色は、白。


けれどどうだろうか、視界の先にいる、此方に背を向けているその人の色は、黒。
戦装束から覗く肌の白さを除けば、戦装束も、髪の色も、全てが黒だ。





…何が個体差だ、個体差で済む話か、これは。




 

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設定タグ:刀剣乱舞 , 鶴丸国永
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詩月(プロフ) - 冷泉 雪桜さん» コメント有難うございます。この文体で書くのは初めてなのでそう言って頂けて良かったです(*¨*) (2020年1月12日 9時) (レス) id: 47903b2cc4 (このIDを非表示/違反報告)
冷泉 雪桜(プロフ) - 初コメ失礼します。素敵な文章でとても感情移入しやすいですね♪今後が楽しみです。頑張って下さい (2020年1月9日 23時) (レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:詩月 | 作成日時:2020年1月6日 19時

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