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樹「……なあ久世。お前腹減ってる？」
「いや別に」
樹「肉まん食べたくね？」
「いや別に、魚が食べたいです」
樹「肉の気分になれよ」
「あんまんなら」
樹「間をとってピザにしよう」
「肉と小豆の間ってピザなんですか？」
樹「違うけどそういうことにしよう。
よし、俺が買ってやるよ」
「お金ないんじゃないの？」
樹「…………できる男はな、財布を２個持ちなんだよ」
「先輩」
ポケットには黒い財布。
腰には鍵を掛けていて、おそらく家の鍵、
「……先輩、かっこよくない」
樹「奢ってやるから文句言うな！！」
「………その財布いくら入ってるんですか」
樹「500円」
「嘘はいいですから電車やらなんか使って帰ってください」
樹「ハハ、嘘ならいいよなーー」
そう絶望した顔で財布を眺めた。
「なんかすみません」
樹「気遣うな、お前の最後の晩餐のためだ」
「フルコース食べたい」
樹「ピザまんの？」
「先輩頭回ってないですね。ニコチン切れました？」
樹「妖精語喋り出す前に買ってくんね？45番」
「ご自分でどうぞ」
樹「家賃払うのに使い切ったんだよ今月」
「先輩なんか人生つらそう」
樹「お前より辛いぜ、贅沢できねえんだから
いいバイト紹介してくんね？久世なんのバイトやってるの」
「……言えないですね」
樹「死ぬんだからバイト辞めたんだろ」
「………」
樹「おま、死ぬ前に色々済ませとけよ！！家の契約とかバイトとか！俺に金譲るとか！！」
「最後は意味分かりません。先輩は私に生きて欲しいの？死んで欲しいの？」
樹「……別に死にたきゃ死にゃいいだろ」
帰り道、レジ袋に入った弁当と片手には肉まん。
真剣な顔をして私を見つめた先輩。
樹「けどその前に何か一つやり遂げろよ。
あるやつの経験談だよこりゃ」
「…いい人ですね先輩」
樹「だからモテちゃうのよ」
「……」
樹「なんか言えよ美女」
「歯食いしばってください」
樹「お前のそのトーンの下がった声なかなか怖いから辞めれる？」
「…先輩、偽善でも振り回されすぎると壊れちゃいますよ」
樹「テメェに言われたかねえよ久世。
おめーは俺と生きて、明日も普通に学校行って、生きるんだよ」
「…私明日全休です」
樹「ほんっとお前なんなの？」
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作者名：嶺 | 作成日時：2022年5月23日 15時
