本懐《黒》 (ページ16)

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あいつはもともと凄いよくモテるやつだった。

高校1年の時も同じクラス。

話さないけどよく呼び出されたりするところは見るし、周りの男子が話していたからよく覚えている。

去年は新任でちょうど深澤先生と遥さんがうちの学校に来た。

遥さんは俺らの国語担当。

これからほぼ毎日会えることにたいしてすげえ嬉しかった。

課題だってめげずに出して、国語の係に立候補して

遥さんと話せる時間や褒めてもらえるようにしていた。

蓮「はる……先生、」

職員室にプリントを届ければ見たことない顔で笑う。

その相手が深澤先生だった。

何度も見てきたし、ずっと見てきたから

だから遥さんより先に気づいた。

苦しかった

最悪だと思った

気持ち悪かった

腹が立った

油断していたのかもしれない。

歳上とはいえ、彼女をよく知るのは俺だけだから

まさかあんな男に遥さんが恋するだなんて

蓮「………うわっ、」

深澤「うわ、ごめんごめんっ！」

廊下を歩いていると先生の持っていたダンボールのそこが抜けてプリントやら資料やらが全部筒抜けで落ちてきた。

深澤「まじでごめん」

蓮「……いえ、別に」

拾うのを手伝っているとそいつと目が合う。

よくよく見れば深澤先生だった。

少し明るい髪、だっさいジャージわざとらしいくらいの香水。

「先生、これどうぞ」

深澤「おっ、A、ありがとな」

「学校だよ、ふかざわセンセ」

深澤「あ！！そうじゃん！？"佐野さん"！！」

落ちていたプリントを拾った女。

クラスメイトだった。

こいつも遥さんと同じで深澤のことが好きなのだろうか。

いや……ちがう

俺はこの眼を知っている。

このつまらなそうな気に食わなそうな冷めた目を。

蓮「……なあ」

「……？なに」

蓮「……あいつの好きな人知ってる？」

「あいつ？深澤先生のこと？」

"知ってるよ"とAは答えた。

俺たちは実に執念深かった。

深澤先生と遥さんが笑顔で笑っていて幸せそうにする。

2人の想いの強さの分が俺たちを壊し、やさぐれた。