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これまた突然なことに、Aは心で首を傾げるしかなかった。
「……マナブくん?」
ゆとりが、ぽつりと呟いた。友一が「知ってるのか?」と問えば、彼女はコクコク、とうなずく。
「深夜のアニメでみたことある。内容が過激で、すぐ打ち切りになったけど」
『マナブくん』はグフフフ、と不気味に笑い、弧を描いた口から白い歯を覗かせた。
「自己紹介は要らないみたいだね。実はさ、この中に高校生のくせに2000万円も借金をしたオトモダチがいるんだ」
その言葉に、全員が目を見開いた。
この中に、2000万円を借金した友達がいる……?
「みんな仲の良い友達って事で、今からゲームに参加して、お金を稼いで、返済してもらいたいんだ」
「は? ゲーム? 返済……?」
「そんな大金……返せるわけねえだろ!」
Aはマナブ言葉を復唱し、友一は叫ぶ。それに、マナブはニコニコしたまま、
「ゲームをクリアするたび、200万円プレゼントするからね。つまり、全員が返すためにはゲームを10回クリアすれば、大丈ブイ! 簡単でしょう?」
「なんでそんな事しなきゃいけないんだよ!」
「あんたたちがやってること、完全に犯罪だからね」
四部と志法がそう言ったが、マナブは「でも……」と少し悲しそうな表情をして、その続きを言い、元の顔に戻った。
「このゲームに申し込んだのは、この中の誰かだよ」
心臓が跳ね返ったかと思った。鼓動の音だけが、脳内に響く。周りが静寂に包まれてしまったせいで、余計に響く。
気付けば、六人はお互いの顔を見ていた。
誰なの。誰だよ。私じゃない。俺でもない。違うよ。こっち見ないで。
まるで、そう言っているみたいだ。みんながみんなの顔を見合う。
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作者名:momonoha | 作成日時:2022年8月24日 18時