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Aは『不正解の場合、出題者のみ借金が半額』という文をもう一度見て、それから視線を離し、言った。
「彼の名前は『マナブくん』である」
マナブを指差す。「カレノ ナマエハ『マナブクン』デアル」
「えー! ボクのこと問題に出してくれるなんて、Aくん、もしかして」
思い切り睨む。もしかしてって、マナブは何を言おうとしたのだろうか。
Aは台上のマナブ人形のことも、精一杯の怒りを込めた視線を送ってやり、人形に指を置いた。続けて志法。六人全員が人形に指を乗せた。
YESに入れて、もう終わらせる。ゲームクリアさせる。
それが、今の僕にできることだから……!
人形が動き出す。
みんながYESに入れたハズ。……Aの頬を冷や汗が頬を流れる。
Aの意に反して、マナブ人形は——
『NO』にたどり着いた。
「みんなひどいなあ。第五問、不正解。ボクは『マナブ』だよ!」
テレビに、×が追加され、残りの空欄は一つ。
「……もういいや」
その呟きは、五人には気付かれなかった。マナブ見ると、ニヤリと白い歯を見せて、口だけで笑っていた。
まずい、とは全く思わない。だって、
——ルール違反。借金は倍。
『不正解の場合、出題者のみ借金が半額』という記述を思い出したのだ。今、不正解だったから、半分になったのか……と思うと、とてつもない嫌気がさした。
これで良い。あんなルールでもらった170万円なんて、嬉しくない。それに、仮にゲームオーバーになっても、借金を背負うのはゆとりじゃなくて、Aだ。
困ってる人を放っておけない性格は、こんなところでも発揮する。
……もう、“あの子”のような、大切な人を失いたくないから。
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作者名:momonoha | 作成日時:2022年8月24日 18時