１０ ページ25
一週間前、友一は校舎の目立たない場所で、散らばった教科書や漫画の下書きを拾うゆとりを見つけた。
「大丈夫か、ゆとり？」
「あ……うん、大丈夫」
友一はしゃがんで、一緒にノート類を拾い始める。
「一人でいると、まだ昔の人たちが少し嫌がらせしてくるんだ」
ゆとりは、友一からノートを受け取る。目を伏せてしまったのは、カバンに荷物を入れるためなのか、嫌がらせが辛かったからなのか。
「ごめん。大丈夫じゃないヤツに、大丈夫かなんて。志法とかなら、気の利いたこと言えるのに」
「友一はそれでいいんだよ。ここだけの話、本当の友達っていえるの、友一だけかもしれない」
少し驚いて、友一はゆとりに視線を送る。
「気付いてる？ 名前を呼び捨てにしてるの、友一だけなんだよ」
「……そうなんだ」
知らなかった、と読み取れる発言をしてしまったが、白々しかっただろうか。でも、ゆとりは「うん」とほほ笑む。
ゆとりは、自分を一番信頼しているという。まだ、彼女は嫌がらせを受けていて、虐められていた時の心の傷だって残っているだろう。
だったら、自分が彼女を裏切ることは、許されない。
そして——。
＊
これも一週間前。友一はAと二人で下校していた。他のメンバーの予定の都合が悪く、二人だけである。
「A、最近どうだ？ あいつらと友達でいて、楽しい？」
Aにそう尋ねた。彼は全く人を信じず、人と自分の間に距離をとってしまっているのだ。
一年生の時、Aから告げられた。中学生の時、クラスメイトに裏切られた。何があっても、ずっと俺らは友達だ、と言ってくれた人が離れていった。先生に相談しても、マトモに取り合ってもらえず、無駄だった。だから、誰も信じられない。泣きながら言う彼は、本当に辛そうだったのを覚えている。
だけど、今は本当に楽しそうだ。念のため、二人だけの時に訊いてみた。
「うん、すっごく楽しい。カラオケに行ったり、あんな大人数で笑い合ったり、友達になれてよかったと思ってる。だから、あの四人を信じてみようと思うんだ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 45人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：momonoha | 作成日時：2022年8月24日 18時
