６ ページ21
「…………え？」
心なしか、志法が拗ねたような表情をしていた。友一と目を合わせようとしない。自分も、随分間抜けな表情をしているだろうな、と思う。
何も答えない友一に、志法は黙って戻ってしまう。友一は何も言えず、彼女の後ろ姿を見つめるだけだった。
……結局、あの後四部は、もう一発拳をお見舞いされたようだが。
＊
帰り道。友一と志法の前を、A、天智、四部、ゆとりが行く。四部は、まだ頬や顎を撫でていた。
「機嫌直った？」
「怒ってないよ」
「よかった〜。お前らが友達じゃなくなったらさ」
「私は、誰かに言われてノコノコ来た友一に怒ってる」
意表を突かれ、ドキリとした。確かに「怒ってない」と彼女は言うが、声質はまだ厳しい。
「……お、俺？」
「私の機嫌、直す気ある？」
「う、うん」
本当に、志法の機嫌を元通りにしようと思っているのに、言葉を濁してしまった。
すると、志法の声が柔らかくなった。
「じゃあ、友一の秘密教えて？ 四人は知らない、私と友一だけの」
「えぇ〜……」
秘密を教えるのは、機嫌を直すことに関係あるのだろうか。それに、志法“だけ”に教える、というのが、少しためらいがある。友達を大切にする、という信条を持っている友一からして、すんなり教えるには罪悪感がある。
「何？」
鋭い声が突き刺さる。……仕方ない、これも、四部と志法の仲を修復するためだ。友一は四人を一度見て、そっと、志法に耳打ちをした。
これで、二人の間のギクシャクは、解消されたはずなのに……。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 45人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：momonoha | 作成日時：2022年8月24日 18時
