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2年C組の教室。赤いジャージを着た先生は「ちょっと言いずらいんだがな」と前置きをして、話し始める。大事な話があるらしい。
「先日、みんなから集めた修学旅行費の208万円が……盗まれた」
一同から、「はぁ?」「え?」と声が上がる。動揺というより、「信じられない」と驚いているクラスメイトが多く、それは片切友一もそうだった。
頬杖をつき、そんな大事な話じゃないだろう、と思っていたら、まさかの修学旅行費の盗難。杖にしていた右腕を机の上に下ろし、少し身を乗り出す。
「私が集金した後、ロッカーに少しの間入れておいて、鍵もかけたし時間も数分だったの。でも、お金はなくなっていた。……みんな、ごめんなさい」
先生と共に、前に立っている女子生徒は、深々と頭を下げた。
沢良宜志法。クラスの副委員長で、事実上のリーダー。品行方正なクソ真面目な優等生だけど、頼りがいのある友達だ。
「お願い! 犯人は名乗り出てほしい。私、何かの間違いって信じたいし、事件なんかにしたくない! お願いします!」
志法はもう一度、腰を折る。それを横目に、彼女の隣に立つ男子生徒も、ぎこちなく頭を下げた。
隣が四部誠。学級委員長なのにどこか上の空なのは、家が金持ちでボンボン育ちだから。ノリは軽いが、憎めいない大事な友達。実は志法のことが好きみたいだ。
「まぁ、まぁまぁまぁ、とにかく、犯人さん」
四部は顔の前で手を合わせ、やはり軽めなノリで「名乗り出てください」とお願いする。
そのせいもあるのだろうか、この時、犯人が名乗り出ることはなかった。
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作者名:momonoha | 作成日時:2022年8月24日 18時