緑色さんの憂鬱 5

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阿部Side




やる、って言ってしまってからは早くて、




ぱぱっと身だしなみを整えらせて、

さくまの運転する車に乗せられて、




あっという間に大嫌いな事務所の地下の前へ。




佐久間もふっかも、決して急かすことはしないけれど、

必ず側にどっちかがいて、逃げられないようになってる。




本当は今すぐにでも逃げ出したいのなんて、ばればれなんだろうなぁ。




両手を引かれて、なるべくゆっくり歩いて

それでも扉の前にはついてしまう。




消毒の匂いと、白を基調とした室内に、足がすくんだ。




佐「抱っこしよっか、おいで？」




立ち止まった俺を見かねて、佐久間は俺を抱き上げると、

いつもの「診察室」じゃなくて、「検査室」ってところに連れて行かれた。




佐久間の膝の上に乗るような感じで、椅子に座る。




お腹のところに回された腕は、俺が逃げないようにするためのもの。

そして、目の前は大きな機械。




阿「や、やだ、まって。」




佐「ん、まだ検査しないよー。

とりあえず、いつものもしもしだけ頑張ろうか。」




機械の横に座ったふっかが、聴診器を持って近づいてきて、

嫌だと拒もうとした手を、佐久間に遮られる。




阿「っ、やぁ、やぁだ。」




それだけで心臓がばくばくして、すごく嫌なの。




深「阿部ちゃん、深呼吸、大丈夫だから。」




佐久間が耳元で一緒に呼吸してくれて、やっと聴診器が離れる。

でも胸のどきどきが消えなくて、息の吸い方が分からなくなった。




あ、やだ、これ苦しいやつ。




阿「はあ、はあ、ッ」




目の前のおっきな機械は、これから俺を苦しくするんだよね。




阿「はあ、はあ、やだぁっ」

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