緑色さんの憂鬱 5

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阿部ちゃんと一緒に加入して、最初の方は気づかなかったんだけど、

時々、ダンスレッスンの時に阿部ちゃんが咳き込んでいるのを見てたんだ。




深「阿部ちゃん、大丈夫？」




阿「こほ、っうん、いつもの、やつ。」




最初は風邪だと思い込んでたし、




同期の奴らも気にしないようにしてたから、

俺もちょっと体が弱いだけなのかな？って思ってた。




阿部ちゃんのお母さんにもそう言われてたし、

もし苦しそうだったら、鞄の横のポケットにお薬があるから、

よろしくねって言われただけだった。




咳することはあっても、苦しそうだと思うことはなかったし、

阿部ちゃんも自分でわかってるだろうって思って、あんまり気にしてなかったの。




でも、ある日すごく激しいダンスを踊ることになって

阿部ちゃんのお母さんが、その日は用事で来ないって言ってたはずなのに、




阿部ちゃんは普通にレッスンに来た。




深「あれ、阿部ちゃん、今日は来ないんじゃなかったの？」

阿「んーん、用事無くなったの。だから大丈夫。」




そう言って阿部ちゃんは普通にレッスンを始めて、

みんなが汗だくで、はあはあ息を切らしている時に、




隣の阿部ちゃんがふらっと倒れたのが分かった。




深「阿部ちゃん！ね、阿部ちゃん！！」




阿「ごほ、ﾋｭｰ、ごほごほ」




阿部ちゃんの呼吸は、子供の自分から見ても明らかに変で、

みるみるうちに顔が真っ青になっていったの。




初めて見る、喘息の発作だった。




怖くて、泣きそうで、でも阿部ちゃんのお母さんの言葉を思い出して

震える手で阿部ちゃんの鞄をあけて、丸っこい容器を出した。




深「阿部ちゃん、これ、くすり…。」

阿「…や！っごほ、おくすり、いらない…！」




俺の手に持った吸入薬は投げ飛ばされて、唖然としてたら、

あっという間に大人の人に抑えられて、無理やり吸入されてた。

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