美しき天才小説家【名探偵コナン】

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貴方side






“ 白樺精寿の新作、早くも50万本突破。
初の芥川賞受賞なるか。 ”









ニュースアプリの通知に浮かび上がった字面。














『新作も出したし、ゆっくりしたいなぁ……』








そんなことを言っても、
スマホの着信音は止まることを知らない。


















「──── 白樺先生、原稿の調子はどうです？
今月こそは期限内に提出してもらいますからね」








開口一番に聞こえてきたのは、
今では聞き慣れた担当編集者、橋屋の声だった。












『いやでも、新作出したばっかだし……』


橋屋「そんなの関係ありませんよ。
“粗悪”の続編ですよ？悠長なこと言ってられません」


『う゛う゛う゛う゛う゛』





スマホを片手に項垂れる。











橋屋「大体、先生が期限内に原稿を済ませてくれれば、
僕がこうやって電話をする必要もないんですよ」


『それは、まぁ………わかってる』


橋屋「わかってませんよ！！
僕にもね、仕事があるんです！！」







まったくうるさい男だなぁ……





















爆発して愚痴を語り出した橋屋に、
私は適当に相槌を打っていく。











橋屋「どうしてこんなに美しい先生が、
男性作家だと言われているんでしょうかねぇ…！！」


『どうしてそこに辿り着いたの』


橋屋「たしかに期限は守らないし、大事な会見も出ない。
取り柄と言えばセンスと容姿くらいですが……」


『もしかして私のことダメ人間だと思ってる？』








酔ってるのかと疑うほどボロが出まくる橋屋。
本当に酷い言い草だ。泣きたい。





















橋屋「先生！！今晩飲み行きましょう！！」










ついにはこんな事まで言い出した。






なんだこの編集者、急に馴れ馴れしいぞ。













『別に構わないけど……』


橋屋「しゃあ！！」


『きみ私に原稿進ませる気ある？』









A．無い。














橋屋「僕、美味しいところ知ってるんですよ〜。
場所は後でメールしますんで！」


『すごいノリノリだね』


橋屋「いやぁそんな……！
あ、原稿お願いしますね！遅れて2日ですよ！」


『はいーー』















通話時間、21分43秒。









今日も溜め息が止まらない。






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