悪女様のオトし方【童磨】 (ページ8)

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Aside

信者の一人が謎の死を遂げてから、早五日。

あれからは特筆すべき不審な出来事は起こっていないのだが、五日前の童磨との会話が私の中で胸に引っ掛かっていた。

私が考えた仮説は、こうだ。

事件があった夜、童磨は何らかの行為を信者に目撃された。他の信者に知られてしまうと都合が悪くなるので、その信者を喰い殺した。

しかし施設内で犯行を行っては意味が無い。

私を含む信者たちの間では殺された信者を恨んでいたり殺害する理由は一切無い。
なので疑われるのは童磨になる。

…私以外の信者はそう思うか分からないけど

私たちが寝静まった夜、誰も目撃者が居ないことを良いことに少し離れた山道に遺体を遺棄、あたかも動物に襲われたかのような他殺に見せかけた…という訳だ。

この施設内でそれに気が付けるのは私だけだ。
他の信者に話を聞いても、「教祖様がそんなことをするはずが無い！」の一点張り。童磨を疑っている信者は誰一人として居なかった。

この事件は疑念から確信へと私の心境を変化させた。

…そろそろ動き出さねばならない。
密かに私は鬼殺隊本部と文通をしている。

そしてこの仮説を文書として、送る予定だ。

A「……忙しくなって来た」

ここ百年余り、十二鬼月の上弦は顔ぶれが変わらないらしい。……その上弦を倒すことが出来たなら、間違いなく鬼舞辻討伐への大きな一歩となるだろう。

自然に口角が釣り上がってゆく。

童「……やぁA！」

A「…ッ！？ヒィッ……

…きょ、教祖…様…」

童「最近俺の事避けてるでしょ？
…遠慮なんかしなくて良いんだよ！

……ただ…」

A「は、はい…」

…気が付かなかった。
吐息一つ、聞こえなかったのだ。

童磨は私の後ろから回り込み真正面に立つと、私の肩に手をポンと置き、こう言った。

童「…Aがなんだか…

あまりにも嬉しそうな表情(カオ)をしていたから声を掛けずにはいられなくてさ！
何か楽しい事でもあったのかい？」

A「…まぁ」

童「やっぱり？
…良かった良かった！！！

君、ここへ来てから笑ったことなかったでしょ？
…可哀想だなぁって心配していたんだけれど。

…君なり(・・・)に楽しそうだったから安心したよ！」

A「いいえ、ご心配をおかけしました。」

童「不幸な信者を幸せにする。救うのが俺の役目だからね」

そう笑う童磨の目は混濁したように不透明に濁って見えた。

＊