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Aside
この施設に居る信者は彼…童磨を崇拝している様子だ。彼は全てを受け入れてくれる。信者たちはそう話していた。
一応私も万世極楽教の「信者」という程で施設に潜入しているわけなのだから、童磨にも信者にも失礼な事は出来ない。
現状、誰が鬼なのかは早速だが目星が付いていた。
一目見た時から人間とは違う何かを感じた。
仏のような笑みとは裏腹に、腹の中から湧き出るような嫌悪感…ただならぬ気配だ。
これは厄介な任務になりそうだ。
施設に来てから三日ほど経過した。
教祖を名乗る童磨が怪しい事以外は特に何も起こっていない。……が、昨日の晩、信者が一人夜逃げをしたらしい。
急いで辺りを探索すると、施設から少しばかり離れた山道に肉を食い荒らされた信者の遺体が転がっていた。
他の信者は動物に襲われたに違いない。
と語っていたのだが、実際のところはどうなのだろうか。
やはり……鬼による被害なのか。
廊下で考え事をしていると、前方からギシギシと誰かの歩く音が聞こえた。
A「ッ………!
…ど、どうも………」
童「おはよう!A!」
A「おはようございます…
あの、つかぬ事をお聞きしますが」
童「何かあったのかい?」
童磨は不思議そうに首を傾げる。
以前と変わらぬ屈託のない笑みで私を見つめている。
…汗が出そうだ。けど。
A「え、えっと。
昨晩信者の一人が逃げた事はご存知ですか?」
童「え?知らないなぁ…
ところで誰が居なくなったんだい?」
A「〜……さん、なんですけど。
急いで辺りを探したんですけど、山道で亡くなってしまっていて……」
童「そうなのかい…
動物にでも襲われてしまったのかなぁ?
あぁ悲しい、今日は彼を悼む日にしようか」
A「そうですね…
ところでもう一つお伺いしたいのですが。
…彼の死因、本当に動物に襲われた…本当にそれなのでしょうか…?」
童「…さぁ、どうだろう。
何れにせよ彼は不幸だったんだ、不幸な彼を幸せにしてあげる事が俺の務めだったのに
…線香を焚いてくるよ」
A「…はい」
そう言い残すと童磨は自室に戻り、線香を焚き始めた。
…怪しい、とても怪しい…
話をはぐらかされた。
ギュッ、と着ている着物を握り締めた。
守れたかもしれなかったのに。
線香の煙たい香りが漂ってきた。
*
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雰囲気ピーマン!(プロフ) - 続きすんごい気になります…更新頑張ってください! (2020年3月12日 6時) (レス) id: 90d8910699 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鳥遊未來 | 作成日時:2020年3月11日 23時