私たちのひかりクラブ (ページ8)

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陸ページ8

何故か分からないが、田宮の家に何日間か預けられていたAは、迎えに来た父と共に急いで帰った

Aの母から、連絡が来たのであろう田宮の母の逼迫した様子でただならぬ自体なのは分かっていた

｢ああああ…！！｣

帰ると、母が叫び声を上げていた

その声に耳と頭が痛くなり、苛ついた上、恐怖を感じた

父はAの目の前にしゃがみ、目線を合わせ、両肩に優しく手を置いた

｢A、いいかい？お兄ちゃんはお空に行ってしまった。もう帰ってこないんだ。分かるね？｣

｢何、言ってるの、あなた…｣

揺らりと立ち上がった母の目は、暗闇
空は明るいのに、光がなかった
窶れた母は化け物のようで、Aは後ずさった

｢そ、そこに、いる、じゃないの｣

母の不気味に笑った顔がAを見据えている
震える人差し指はこちらを向いている
Aはその人差し指を凝視した

｢何言ってるんだ、この子はAだぞ｣

父は腕の時計をちらりと見て、立ち上がった

｢父さん、仕事に戻るから。母さんをよろしくな｣

申し訳なさそうな顔でAを見つめる父

"逃げるのか、アンタは、それでも父親なのか？"

父が、母を優しく見ることはなかったように思われる

きっとそれは、変わらない

今までも、これからも

｢…こんな時でも、あの人は…!｣

母は兄を失った悲しみと、夫への失意から、絶望の淵に立ったかのような、いや、もう堕ちかけている表情で、どこかを見つめていた

そんな様子を、Aは、黙って見ていた

Aの伏せた目の睫毛は艶やかで羽ばたくように長かった

＿＿＿＿翌日＿＿＿＿

父は帰ってこなかった

『やだ！母さん！やめて！』

｢男の子でしょう｣

『ちがう、ちがうわ、母さん！』

｢男の子なのにこんなに髪を長くして｣

『やめて！』

髪を掴まれ、放り投げられ、壁にぶつかった

鈍い音と共に全身が痛み始める

顔を上げられなくて、俯いていると、目を見開いた

無数の切られた髪の毛がAの周りにあるのだ

｢女なんかより、男の子がいいのよ｣

笑った母の目は、もう駄目だった

母の中で、兄が死んだのではなく、Aが死んだのだ

"これだから、大人は。大人ってやつは！"

Aは足元の髪を見つめて、涙が出てきた

悲しいからでは無い

母への失望からだった