吸血姫と呼ばれた少女【ワンピース】 (ページ39)

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海賊ページ39

なにか聞こえる

誰かがあたしを呼ぶ声

誰なの？そこにいるの？

甲板を探しても聞こえてくる声は海の彼方から

姿を見せて、あなたは誰なの？

『ﾊｧ､また、聞こえる…』

｢よ、どうしたんだ、A｣

甲板で黄昏れ、海を眺めているA
そこにサッチが来て片手にデザートを持ち、Aの肩に腕を回す

『聞こえない？誰かの歌う声、あたしを呼んでる…』

Aは目をこらすが島すら見えない

｢聞こえねえなあ。お化けとかやめろよ？｣

サッチはにやにやしながら顔を青ざめさせる

『ふはっ、ちがうちがう。誰かが、あたしの生まれた国の歌を歌ってるの』

｢…お前、そういや国に戻りたいとは思わねえのか。Aから故郷の話聞いたことねぇが…聞いちゃダメだったか?｣

ハッと気づいて申し訳なさそうにするサッチ

『構わないわ…滅亡したのに、今はあると思う？』

眉を下げ、寂しい笑顔で隣のサッチを見上げるA

｢探せよ、俺たちは、海賊だろ？｣

『かい、ぞく…』

｢おーい、サッチ！!!Aちゃんから離れろ!!ちょっとこっち手伝え!!｣

｢呼ばれたから行くな。これ食べて元気出せ、またなんかあったら言えよ｣

わしゃわしゃとAの頭を撫でるサッチ

行ってしまった

Aはサッチの向かった方をボーッと見つめた後、柵に肘をつき、海に視線を戻して考え始めた

A自身は

海賊になった覚えはなかった

海軍の時は海軍という意識があった

だが今は白ひげの、エドワード・ニューゲートの、船に乗ってるんだから海賊だろう

ドフラミンゴだって海賊団だったじゃないか

だけど自分が海賊であるという意識はなかった

海賊は物を人の命も奪う
最低なヤツらだと教えられた

そんなヤツらになんかなりたくないと思ってたのに
今はそんなことない

あたしは海賊だ
海賊は自由なんだ
欲しいものはなんでも手に入れる
どんな手段を使ってでも

探してみせる、この声の正体

Aは聞こえてくる声に合わせて歌う

子守唄のようでいて、力強く、逞しい、優しくて、良い心地のする歌

この声に聞き覚えはある

だれか、大切な人の、声

『〜♪』