仲間 ページ35
『と、いうわけ。あの時は苛立ってて無愛想になってしまった。すまない』
｢そうだったのか?気づかなかったぞ…｣
『君が鈍感でよかった』
｢…俺、ほんとに感謝してるんだ。あの時、Aさんがいなかったら、今俺はここにいないかもしれねえ。だから、｣
『A』
｢…？｣
『もう仲間だろ？"さん"だなんて他人行儀は嫌。改めてよろしくね、エース！』
｢お、おう！よろしくな、A!!｣
やはり彼の笑顔は太陽のよう
わーい弟だ！と自慢して回るAは心底嬉しそう
その日は宴が行われた
『エース、あたしたち今日の船番ね。酒で潰れないでちゃんと来てよ？』
｢どこに？｣
『ん』
Aは展望台に人差し指を指した
なるほど、上には展望台がある
ニコッと笑って呑気にスキップしながら甲板を酒を片手に柱にぶつかった
自分が忠告したのに
痛い痛い、と1人で騒ぐAはなんとも可愛らしい
気をつけなさい、とお兄ちゃん達に小突かれている
｢浮かれてるねぇ｣
｢あんなにウキウキしてんの久しぶりだな｣
｢船が賑やかになるぞ｣
｢お前のおかげであの子は元気になった｣
隣で飲んでいたエースに声をかける兄
｢俺のおかげ?｣
｢新しい物好きだし｣
｢知り合いだし｣
｢嬉しいんだろう｣
｢若ぇしな｣
そんなものなのかと遠くで騒いでいるAを見つめる
新しい兄たちはAを愛おしそうに微笑ましく見ている
余程大事にされているらしい
この船は、この家族は、きっと、大切な場所になる
もう会うことはあるまい、と考えていた少年に再会した
なんという運命だろう
これから旅をするのが楽しみだ
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作者名：ぽ | 作成日時：2021年7月13日 0時
