大人になったら (ページ2)

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社長「君の叶えられなかった夢を、ある子達に託してみないか」

「え…？？」

ショートした思考をフルに回転させる。

「託すって...？？誰にですか？？」

社長「まぁ少しついてきて」

呆けた顔をしながらとにかく前を歩く社長さんについていく。
クビだと思っていたんだけど...
実際クビでないと、私が困る。
この事務所には思い入れが強すぎて、
ダンスに関わることができないのに事務所にいても
自分が辛いだけだ。

ぐるぐる考えながらただ社長さんについていくと
ピタリと社長さんの足が止まった。

社長「ここにいる皆んなに君の夢を託すんだ。」

ガラス張りの部屋。
私が少し前まで毎日の様に出入りしていた部屋。

その部屋を社長さんと外から眺める。

「練習...室...練習生...ですか...？」

中にはたくさんの練習生がいて
皆一心不乱に踊っている。

私も少し前まではその一員だった。

部屋の中には一緒に練習していた友達もたくさんいて、
その子達の顔を見ると抑えていた想いが溢れてくる。

「あの...私の夢を練習生達に託すって...どういうことですか...？？」

震える声で出来るだけ感情的にならない様に
言葉を選びながら話す。
社長さんの目を見ることはできない。

少しでも気を抜くと
溢れるダンスへの想いに押し潰され、
この場から泣いて逃げてしまいそうで。

隣の部屋の皆んなは全力で踊れるのに
私は踊ることができない。
もうデビューすることはできない私にこの空間は辛すぎる。

社長さんはそんな私をしばらく見つめてから口を開いた。

社長「あの子達を一流のアイドルに育て上げる。君の手で。このSMエンターテインメントのアイドルとしてデビューさせて、彼らの夢を君が叶えるんだ。」

「...は？？？？」

目を見開く私に社長さんは
優しく微笑み返すだけだった。