【FGO】元マスターで現候補生の俺 (ページ9)

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8話ページ9

夕食後、「協力するよ！」と言われて手を引かれ、連れてこられたのはシュミレーター室。

とりあえず突撃して困ったらあとから考えよう！という初凸猛進な考えを持つ彼女は、作戦などなく、「当たって砕けろ！」と俺に助言をくれた。

立香(無理やり呼ばされている)さんの思いも無下にできず、何気に俺も英霊達と真正面から対峙するのも初めてだったので、ワクワク半分怖さ半分な気持ちで挑んだ。

俺なりに比較的優しげで声をかけやすような英霊達に話しかけてみた。

「ごめんなさい、既にお願いされている方がいて…」
「ぼ、僕には無理ッスよ。大体連れてこられただけだし忙しいッス！！」
「わたしたち、おかあさんが好きだから。」

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撃沈、見事に全敗である。途中で立香さんは明日の微小特異点へのレイシフトの用意のため、いなくなった。
姿が見えなくなる時まで大きな声で、最後まで居れなくてごめんね。と手を振っていた彼女を見て手を振り返した。

シュミレーター室に来たのは夕方近くだったので、外は多分暗いだろう。

幻想的な星空の下、崖っぷちに座って黄昏ていた。

他の英霊たちはいつの間にかシュミレーター室から居なくなっていたようで、今では気配すらせず、肌寒いそよ風が頬を撫でている。

今は、何となく心が安らげる場所が少し欲しかった。

…1人になると、色々なことが頭によぎる。

最初は主人公になれたと思った。

だが実際はガワを被っただけの偽物に過ぎず、能力なんて足りてないし、魔術社会で無知で馬鹿でしか無かった俺を慕う人なんて誰一人としていなかった。

それでも、俺しかいないこの世界で俺は、この世界を救いたかった。実際はその世界すらも無くなってしまっているかもしれないが。

レイシフト時に巻き込まれ、飛ばされたこの世界。

そこで俺は見た。お人好しの藤丸立香、英霊に好かれる藤丸立香、明るく元気なムードメーカーの藤丸立香。

”あっ、これが色々な人に信頼される人なんだな”って心の底から思った。嫉妬の感情すら残っておらず、ただただ、彼女の役を担って調子こいてた自分がどうしようもなく恥ずかしかった。

口を噛み、裾を思い切り握り、瞳から流れでる雫を少しでも抑えようとしたが、目元に触れると、そもそも濡れてすらいなかった。

重くのしかかった心だけが俺にあった。

右腕にズキリとした痛みが走った。