5話 ページ6
ここにいるのに、まるでここにいないような扱いをされるのが日常なカルデア。
常に英霊が見張ってることを意識して一つ一つの行動に注視しなければ、怪しいと思われた瞬間実質【死】なのだ。
なんなら目の前で秘密裏に処理するところを見て、ガン飛ばされる始末である。英霊怖すぎる。そして人権が無さすぎる。
リアルで見る英霊達は、とてつもなくカッコイイし、会えてよかったと思いはするが、起爆寸前の爆弾を見ているようで、彼らが近くを通るだけで息が止まるほどだった。
そして、カルデアでのマスター候補生の身分はかなり低い。
最初から立香ちゃんを蹴り落とし、自分がその立ち位置に降臨しようとする目的の奴が多すぎるせいで、全員がそういう目で見られている節がある。
その上、押し付けてきた家族も「厄介だ」つってるわけだから、別に俺たちをどうこう扱おうが誰も文句を言う奴は居ないのである。
「お前、ギルガメッシュなんだろ？僕と契約しよう！あんな一般人なんかより僕は魔力は豊富だ、お前といいパートナーになれるよ」
「この英雄王を”パートナー”などと笑わせる…ちょうど飽いていた所よ。貴様程度でも道化師位にはなれるかもしれんなァ？」
「貴方アーサー王でしょう！？私に相応しいですわね、眷属となりなさい」
「失礼、食事の時間ですので」
廊下にて、現在進行形で空気が重く、正直息を吸うだけで苦しい。見つからないように、物音を立てず脇の方をそそくさと抜ける。
何故振られているのに専属サーヴァントに誘って死にに行くような真似をしているのか。俺には検討もつかない。
何らかの不運でここに来て数日、マスター候補生達が自分の立ち位置も理解せずにサーヴァントと契 約を交わしたがっていた。
契約している所も見かけたが、大体サーヴァントの機嫌が良い時であった。
既にサーヴァントを連れ歩いている子も見かけ、行動力あるなぁってすごく感心した。
「ねえ君！」
「はい？…えっ」
オレンジ色の髪を元気よく跳ねさせ、カルデアの支給された礼装を身にまとい、まるで同級生と会ったような態度で話しかけられる。
「”藤丸立香”…さん」
「覚えててくれたんだね〜、ありがとう！どの子に話しかけても冷たいし、親の仇のように私の名前言ってくるから怖いんだよね」
あははと、苦笑をこぼす彼女の姿は、到底人類最後のマスターとは思えなかった。
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作者名：木綿豆腐 | 作成日時：2022年12月20日 7時
