3話 ページ3
レイシフトを開始するといった声とともに、彼らの周りに光が立ちこめる。管制室は酷く静かで、誰かが息を呑むのも容易く聞こえた。
聖杯探索は幕を閉じた。抗うことすら許されず、聖杯を回収することすら叶わず、人理は滅びゆく運命となった。
「みんなありがとう。藤丸くんの安否を確認し、レイシフトが終わり次第解散だ。医療の知識がある者はマシュの治療が優先してくれ、
それ以外のものは残りの時間を自由に過ごして欲しい」
ふうと息を吐けば、途端に崩れる足。ガタンと大きな音を立てて床に当たれば、他の職員達も同様に椅子から崩れ落ちていた。
「━━━━━━━━━」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
刹那、先程までの空気が変わり、カルデアスタッフの悲鳴のような声が轟いた。
「所長!藤丸立香の存在証明が出来ません!!」
「…どういうことだ、レイシフトは成功してる。トリスメギストスにも異常は出ていない」
「ドクター…」
か細い声がコフィンから聞こえる。
「おかえりマシュ。傷の手当を……?」
目を疑った。コフィンに縋ってようやく立っている状況のマシュだが、おかしい。
「ドクター…ッ」
彼女の傷がない、というか癒えている……?
鎧にも傷一つもなく、レイシフトする前の彼女と姿形が何も変わらない。
「マスターが、”先輩”がッ何処にも……いないんです。先程まで確かに手を握ってくれていたのに…!」
涙を零しながら必死に訴える彼女の表情は、今までみた中で一番、悲しみに満ち溢れた顔だった。
「みんな!緊急事態だ、
レイシフトが失敗した、各特異点、座標をくまなく調べあげるんだッ!
藤丸立香を探せ!」
管制室が慌ただしく回り始める。彼はレイシフト適正100%だが、もし特異点に飛ばされてしまったのであれば、これから何が起こるかわからない。
「━━━━━━、ようやく干渉できた。」
「…お前はッ」
花びらと共に突如として姿を現した、白いサーヴァント。トンと心地よい杖の音が辺りに響く。彼が歩みを進めるだけで、管制室にてウザったいくらいの花の香りが立ちこめた。
「なんの用で来たんだマーリン。僕達は今忙しいんだ」
「僕も君との再会を喜びたいところだが、事情があってね。別の”僕”に小細工されたようで、少し気がたっているんだ」
「…詳しく聞かせてくれる」
50人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:木綿豆腐 | 作成日時:2022年12月20日 7時