14話 ページ15
「…バレてました？」
「分かるよそりゃ！これでもカルデアの医療担当だからね、はい見せて！」
ガラガラと音を立て、今にも崩れそうな所を器用に通るドクター。こちらへと近づいてくる様子に、身体も無意識に逃げようとするが、当然あっちの方が早い。
「……」
「君がここに来てまだ数日だし、信用出来ないのも分かる。でも傷はダメだ、いずれ帰る君にとって残しちゃいけないものだよ」
普通だったら喜んでいたであろう言葉。だけど今の俺にとっては無数の槍が突き刺さって来るような感覚だった。
帰る場所って、あるっけ。
黒いモヤモヤが心に埋め尽くされていく感覚がする中、「うわぁ、これよく歩けてたね」とあたかも自分が怪我をしたかのような反応で怪我の細部を眺めていた。
「皮膚の中にガラス残ってる、取り除くから今すぐ医務室行くよ！」
はい！と背中を差し出されて少し頭がこんがらがった。えッ、おんぶするの？
「いいの？僕が無理やり連れていくとしたら君のこと抱っこしなきゃいけないんだよ…?」
抱っこは嫌だな。どういう抱かれ方をするのか知らないけど抱っこだけは絶対に嫌だな。
「お願いします」
「ハハ、ほらおいで」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
━━俺は特異点に向かわなくて大丈夫なんですか
「さっきの質問だけどね、君には第1特異点へと向かってもらうつもりだよ」
分かっていたことだ。今の状況を考えると誰だって当たり前、と回答する程。でも、俺なんかに世界を救うだなんて荷は重すぎて潰れてしまう。
赤が滲んだ包帯は、ドクターによって次々と解かれている。段々と傷口が空気に触れていく感覚がして、またズキリといたんだ。
「━━━━━━━でもね、まだ今は行かない」
「……えっ？」
「消毒使うね〜」とこちらのことを気にも止めていない様子で目の前の男はテキパキと処置を進めていった。
(_一瞬何言われてるか分からなくて、聞き返してしまった_)
カルデアは人理を継続させることが目的の施設だったはず。だから、今1番やらなければならないことはいち早く特異点へと出向いて修復しないといけないんじゃ……
あれ、今俺、安心してる？
その後、ドクターは手当している間何も話さなかった。ピンセットで小さなガラスを抜く時は少し痛かったけれど、それでも何も言わずに丁寧に包帯を巻いて終わった。
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作者名：木綿豆腐 | 作成日時：2022年12月20日 7時
