13話 ページ14
これから先藤丸立香の自分に巻き起こる数々の出来事は俺だけが知っている。そして、転生した今俺だけが未来予知のような形でその物語を辿りながら生きている。
藤丸立香として成り代わった自分は、これから数々の無理難題が宛てがわれることも俺だけが知っている。それでも分からないこと。
腹をかき回される感覚とは？血管が切れて足がちぎれかける痛みとは？自分はどうなってもいい、だから世界を救いたい、なんて思えるほどの意志の強さとは？
靴の底を貫通した硝子が足に刺さる痛みは昨日知った。とても痛い、もう二度とあんな道渡りたくないって思うほど。今だって歩く度にズキズキと傷口から足にかけて電流が走っているようだった。
でもこれからはそれ以上の痛みが何度も、何度も、何度も、襲ってくるのだ。
俺は自分の痛覚が無くなり、感情表現が乏しくなるまで死にものぐるいで世界を救わなきゃ行けない。
誰にでも等しく明日はやってくる。その日がどんな日か分からないから明日を迎えられる。
でも俺がこれから迎える明日は希望に満ち溢れているものでは無いのは確かだ。
━━━━━━━━進んだ先に残ったものなんて、
━━━━━━━━━━━━ありはしなかったら？
先なんて分からない、まだ
「…くん、藤丸くん！」
「ぁ、すみません」
大きく肩を揺さぶられて視界が鮮明になる。考え事に耽っていたようでドクターを見ると焦ったような表情でずっとこちらを見つめていた。
少し力を込められて掴まれていた手は、ゆるりと肩から退いていった。
「…大丈夫かい？顔色が悪そうだけれど、今日は部屋で休んでおく？」
「いえ！手伝います。…すみません、ここであったことが浮世離れすぎて、まだ現実だと思えてなくて」
「魔術とかマスターとか一般的に生きていたら聞かないものだからね、仕方ないよ。ところでさっきの質問だけど─
…とりあえず手を動かしながら話そうか」
大きな瓦礫とか重いものは非力な俺たちで運べない。特に今の俺は約立たずであるから、散らばった紙くずの片付けと整頓を主に手分けして綺麗にしていった。
始終ドクターは俺の事をよく見て仕事を渡してくれていた。
瓦礫が重なって危険そうな所は代わりに行ってくれたり、紙を仕分けたりするあまり動かない作業とかは俺に回してくれた。
ふとドクターがこちらを見ているのに気づいた。
━━━━━━━「足、怪我してるでしょ」
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作者名：木綿豆腐 | 作成日時：2022年12月20日 7時
