11話 ページ12
「この最後の1本貰っちゃってもいいかな」
「いいですよ」
「ありがとう、悪いけど席外すね!食べ終わったらそのまま机に置いといてくれたら誰か行かせるから」
「さ、流石に自分で持っていきますー!!」
まるで嵐が過ぎ去ったかのように、部屋はまた静けさを取り戻した。
前のカルデアの形見のようなものが無くなってしまったが、たぶんマスターに毒を盛られないために何か調べたりするんだろう。致し方ない犠牲だ。
それにしても、もう一本ぐらい残しとけば良かった。
「美味しい」
傍から見れば幸せそうに食事をしているように見える。だが、彼の心の中に塞がりかけた歪な亀裂が入り始めていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「ダ・ヴィンチちゃん、これって」
「あぁ…悲惨だ。生体反応も何もない、燃やし尽くされている」
彼女たちがいる微小特異点。
立つ大地には嫌なほど見覚えがあり、同時に思い出があった。
音楽と言葉で分かりあい、綺麗な星空を眺めながら語り合った、聖杯探索最初の特異点。オルレアン
そんな記憶が炎と血と鼻をつんざく嫌な匂いで消されてくようだった。
燃えるモノが無くなろうが、城が崩れようが、全てが無くなろうが炎はきっと止まらない。
「なんで…」
「一旦、離れましょう。」
「…マシュ」
辛くないの?と言いたげに盾の少女を視線を向けた。だが直ぐにそれは思い違いだったと、藤丸立香は後悔した。
盾の少女は溢れんばかりに涙を流していた。声を押し殺して、必死に耐えていた。そんな少女の姿を見て、藤丸立香も胸が苦しかった。
「2人とも、悪いがまたあの場所を探索してもらうことになりそうだ。生憎、エネミーも存在していないようだからね」
レオナルド・ダ・ヴィンチは自分が告げていることか、彼女達の心に不穏な影をさすことになることは理解出来ていた。
それでも、この特異点の謎を解かなければ行けない。唐突に発生した微小特異点オルレアン。特異点自体の範囲は、オルレアンの土地から、藤丸立香が野営した森までの直線型の地形となっていた。
かつて1度修復した特異点が復活することはなかった。だが、可能性を考慮すると存在しないわけは無い。
「これはあまりにも…おかしすぎる。」
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作者名:木綿豆腐 | 作成日時:2022年12月20日 7時