10話 ページ11
「あたしも来るはずなかったんだけどね、食堂のアーチャーが”君に”って」
ブーディカさんが持ってきていたお盆の上には、一汁三菜と、綺麗にバランスが整った日本食が置かれていた。
…エミヤさんだ。
ホカホカと湯気がたち、作られたばかりのような料理に思わず喉を鳴らした。
「はいこれ」
備え付けのテーブルに食事だけを置くと、皿の隙間に置いてあったのか、小さなメモ帳のようなものも渡してきた。
「”作りすぎたから食べてやってくれ”…」
どことなく走り書きにも見える丁寧な字でその一言だけ書かれていた。
「い、頂いてもいいんですか？」
「どうぞ〜！ってあたしが言うことじゃないんだけどね」
「でも、俺。」
「いいのいいの、何を気にしてるのか分からないけど、あたし達が勝手にやってるだけだから！」
「…。」
おそるおそる食事に手をつける。
汁物を頂こうと、食器の蓋を取るとそこには、様々な野菜が使われた具沢山の味噌汁が入っていた。
一口だけ、と食欲が抑えられない身体に対して、俺はさっき食ってた携帯食だけじゃ満足できてなかったんだと思うと同時に、少しカッコつけていたような自分が恥ずかしくなった。
美味しさには耐えきれず、そのまま味噌汁を食べようと箸を手に取った。
「これって何処の携帯食？」
一瞬、体が凍ったように動かなくなった。箸を落としそうになって、寸前のところでキャッチした。
ここにこの携帯食が無いかもしれない、という可能性を考慮していなかった。
…何か怪しいと疑われるかもしれない。
分かりやすく止まった俺に対して、ブーディカさんは少々困ったような笑みを浮かべてしまった。
「…ごめん、もしかして言いたくないことだったかな。無神経だったね」
「いえッ、…実は親戚の叔父が開発してた物を頂いて」
間違ったことは言っていない。
この携帯食はロマニ・アーキマンとカルデアスタッフの協力により開発された携帯食。と大層なことは言っても、リソース不足のカルデアで制作されたのもあって本当に必要最低限の栄養しか取れない。
でも、自分でも分からない程気に入っていて、短い間だったけれど結構お世話になった。
…それに、向こうから持ってこれたのもコレしかないし。
「いいなぁ、あたしの頃にもこういうのあったら良かったのに」
そう言うと唐突に何か閃いたかのような顔になって、彼女は勢いよくこちらに向き直した、
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 50人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：木綿豆腐 | 作成日時：2022年12月20日 7時
