episode 03 ページ3
「今、何したの……？」
自分の思い通りにならない感情は少し恐怖すら覚える。
「あ、え……ごめん、なさい」
しまった、という顔をした少女は消え入るような声で謝罪を口にする。
「レイアちゃん、辛そうだったから……。私の、個性で……」
「私に、個性使ったってこと？」
「あの、私、ごめんなさい……」
さっきまで消えていた怒りの感情がまた湧き上がってくる。なによ？同情？そんなの求めてない。
「言っとくけど私、あんたに同情されるほど落ちてなんかないわよ！」
また感情を操られたらどうしよう。そんな恐怖もあったけどこれだけは言わないと気がすまなかった。
私のプライドがこれ以上惨めな思いは許さなかった。
こんな、気の弱そうな子にまで心配されるなんて。
噛み締めた唇から血の味がする。
「でも、レイアちゃん……ほんとに辛そうだったから……」
「バカにしないでよ！」
怒りに任せて手を振り上げる。勢いのままにその手を振り下ろそうとした時、誰かがその手を掴んだ。
「はーいストップー。お嬢、暴力はダメだよ」
唐突に、赤い瞳の青年がどこからともなく現れた。
「椿……」
彼が、私の個性だ。
「勝手に出てこないでっていつも言ってるでしょ？」
「んーお嬢の命令は俺にとって絶対だけど、今回は俺がいなきゃやばかったっしょ」
お嬢をいじめた奴らと同じになりたいの、と椿の瞳が私を射抜く。
そう言われて手に込めていた力を抜く。あんな奴らとは、同じになりたくない。それを感じ取った椿が掴んでいた手を離してくれた。だらんと力なく垂れ下がる腕。私は下を向いて唇を噛む。
「ごめんね〜、お嬢今気が立ってんの。許してあげて。ほら、お嬢」
「……悪かったわ」
「いや、そんな……！ 私も悪かったですし……！」
あわあわと首を振る彼女にイライラが募る。
「いい？ 今回は私が悪い。それでこの話はおしまいよ。……帰るわよ、椿」
もう空が暗くなり始めている。早く帰らないと両親がまた心配するわ。最近心配かけてばっかりだっていうのに。
「あ、あの！」
少女に背を向けて一歩踏み出した時。少女の声がもう私たち以外は誰もいない公園に響いた。
「私、名取心……！あ、あの……もし良かったら、なんだけど……私と、友達になって、くれ、ない……かな？」
徐々に小さくなっていく少女の声を聞きながら私は歩を進める。
「考えとくわ」
それだけ言い残して。
これが、私と後の親友名取心との出会いだった。
続く
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都古 菫(プロフ) - 豚さんの貯金箱さん» こちらこそありがとうございます！心ちゃん、これからばんばん出てくる予定なのでよろしくお願いします！ (2018年12月14日 17時) (
レス) id: 94fcc69a32 (このIDを非表示/違反報告)
豚さんの貯金箱(プロフ) - 心出してくださってありがとうございます…！読みやすい文章で続きが楽しみです！更新頑張ってください！！ (2018年12月14日 17時) (レス) id: 405aa68e96 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：都古 菫 | 作成日時：2018年12月14日 0時
