墓場のほうが慈悲深い/1 ページ43
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「 腰いた……クソ…油断した 」
ふと目覚めた川端は部屋にひとり取り残されていた。ズキズキと鋭い痛みの走る腰を摩り、またゴーゴリがカーテンを開けたままだったことに気付く。意識が飛ぶ前はまだ明るかったはずなのに、外はもう既に夕暮れである。
フョードルからは待機命令の他何も伝えられない。このままゴーゴリの好きにされていればいずれ時間の感覚がなくなってしまうだろう。
「 痛いよ〜全身気持ち悪いよ〜〜シャワー入りたい〜〜動けない〜〜 」
一人であることをいいことに散々文句を云ったりゴーゴリの悪態をついていると、ガチャリという音と共に人の気配がした。
「 ドス君居ないんだからAちゃん自分でやんないと駄目でしょ!お部屋の予約延長して来たから 」
「 エッ誰? 」
「 チェーンもしといてよ!あとご飯!食べてないでしょ! 」
知らないサラリーマンがそこに立っていた。一気に捲し立てた彼は川端の怯えた表情を見ると呆れた表情から一転、口角を吊り上げた。
「 さて、誰でしょー! 」
「 ………おいテメェよぉ?ゴーゴリくん。私を揶揄うのもいい加減にし給えよ 」
「 あれ〜バレた? 」
身を翻したゴーゴリは何時もの道化師のような姿に変わる。呆れた顔の川端は近くにあったシーツを手繰り寄せる。
「 Aちゃん、服着たら? 」
「 ハァ〜〜〜?もう無理って云ったのに意識飛んだ後も続けて挙げ句の果てに女置いてどっか行ったきみが云いますか〜? 」
「 僕も表向きは役人だからね! 」
「 莫迦野郎!痛かったし今もめっちゃ痛いんだぞこの野郎! 」
信じられない、と怒る川端の髪を撫でるゴーゴリは、仮面を外し目を合わせてごめんと伝えた。膝裏に腕を回し、胸板を押して抵抗する川端を軽々と持ち上げてバスルームへと向かう。
「 待って、シャワー一緒に入んの? 」
「 だって立てないでしょ 」
「 それはまあ…え、反省してる? 」
「 ん〜〜やり過ぎたかなぁとは思う!これからもするけど! 」
「 怒るよ 」
このくらいでいい?と温度を調節したお湯が川端の肩にかかる。もう少し熱いのがいい、と川端が温度を上げた。びちゃびちゃと小さな水溜りが増えてゆくのを、俯いたままの川端はその瞳に捉えていた。
「 あ、昨日ここにキスしてなかった 」
ゴーゴリの唇が頸に触れる。びくりと体を揺らし、川端は振り向いた。
「 なんでそういうの、するの 」
少し考えて、彼は優しく笑う。
「 ドス君がきみにこうやって触れたいから 」
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ねむい(プロフ) - kuroさん» こんにちは、本当にありがとうございます!とても励みになります!これからもどうぞよろしくお願い致します! (2020年1月24日 23時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
kuro(プロフ) - この先の展開がとても気になります!更新頑張ってください! (2020年1月24日 8時) (レス) id: f9572c4e12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねむい | 作者ホームページ:
作成日時:2020年1月19日 23時