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うつし世は夢/1 ページ32

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午後三時の喫茶うずまき。
ゆったりとした空気が、店内にかかる音楽とともに漂っている。窓から斜めに陽が差している。


「 乱歩くん、我輩今日も推理遊戯を用意してきたのであるが 」

「 ふうん、そう。じゃあ、やろう 」

「 ら、乱歩君っ、何処に向かって……! 」


乱歩は店内を歩き回りながら鼻歌を歌う。ポオはその後を本を抱え急ぎ足で追いかけていた。


「 すぐ解るよ。今日は僕の他にも参加者がいるみたいだから 」

「 さんかしゃ? 」


乱歩は窓際の席に腰を下ろして、ポケットから棒付き飴を出す。そのままそれを咥え、真正面に腰を下ろしたポオの背後を見つめた。ちょうど、喫茶の入口の扉である。


「 まあ、何人参加者がいてもこの謎は解けないのである! 」


ポオは用意していたカードを机の上に並べ始める。ちょうど扉の開く音がして、来客。ベルの音が鳴らなかったので従業員は気がついていないらしい。

乱歩はその客人(、、)をじっと見つめながら、ポオの説明を聞く。不思議なことに、その人間はそこから動かなかった。


「 そして、この男が館の主人__って乱歩君、ちゃんと聞いてるのであるか? 」

「 あぁ、うん__聞いてる。だってもう、解ったからね 」


乱歩は押し上げようとして、押し上げる眼鏡を掛けていないのに気がつく。そうして、一人の人物を指し示した。


「「 犯人は、その人だよ 」」

「……え? 」


一瞬。しんと店内が静まり返ってから、ポオが勢いよく声の主を振り向く。そこに立っていた客人(、、)は乱歩と同じ人物を指し、笑顔を浮かべていた。


「 こんにちは。元気そうですね。今日はあったかくて、気持ちがいい 」

「 君も、元気そうだね、川端A 」


その対峙に、面食らったポオを他所に、川端は何事もなかったかのようにポオの隣に腰を下ろした。


「 我輩の謎が、解けたのであるか? 」

「 御免なさい、盗み聞きする心算は無かったんです。でもやっぱり、名探偵(、、、)がここにはいるんですから、その人よりも早く謎を解きたい!ってなっちゃって 」

「 まあ実際、僕のほうが1秒くらいは早かったけどね! 」


悔しいな、と苦笑する川端に、乱歩は少し考えるようにして黙り込む。ポオは沈黙にオロオロとしており、川端は勝手にアイスコーヒーを頼んだ。


「 でも君、なかなか見込みがある。僕の弟子にしてあげても良いよ! 」

「 えっ、本当ですか!うれしいなあ 」


届いたアイスコーヒーをかき混ぜて、川端は心底楽しそうに笑った。



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ねむい(プロフ) - kuroさん» こんにちは、本当にありがとうございます!とても励みになります!これからもどうぞよろしくお願い致します! (2020年1月24日 23時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
kuro(プロフ) - この先の展開がとても気になります!更新頑張ってください! (2020年1月24日 8時) (レス) id: f9572c4e12 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ねむい | 作者ホームページ:   
作成日時:2020年1月19日 23時

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