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その日の前に ページ17





「 A!いい朝だな! 」
「 ふふ、ここじゃ朝も夜もわからないけどね 」
「 ううん、いい朝だ、忌々しいくらい 」
「 ……レオくん? 」



彼がここに来ることができる回数を考えて、いかないで と口走りたくなる感情を抑えた。吐きそうなほど、体の中に溜まった感情で、内から侵食されていくようだ。



「 今日はな、渡したいものがあって! 」
「 ん、なに 」



レオくんがポケットを漁った。もぞもぞと動く手と、あれ? と慌てる彼を見て。




「 あれ、ない!? 」
「 今度来た時で大丈夫だよ、ゆっくりで 」
「 ん〜おかしいな…ポケットに入れて寝たはずなのに… 」



頭を抱える彼から少しだけ視線を外した。彼は、私が死んだ とハッキリ言ったことは、一度たりともないのだ。彼の優しさか、それとも気が付いていないのか。どちらにせよ彼がここに来ることができる回数は、多分一回。たくさん話して、少しでも思い出を作っておきたい。回数切符が切れる前に。




「 A 」
「 …ん? 」



「 あのさ、Aって… 」



彼が言いかけたところで、アナウンス。



「 間もなく発車致します 」


彼はあーっ! と叫んで黙り込んだ。やがて立ち上がって、儚く笑顔を作る。
彼のつま先が、電車に吸い込まれてゆく。



「 じゃあな、また明日 」
「 レオくん、待って、言おうとしたこと! 」
「 また、明日 」



「 …うん、またね 」



ドアが閉まる。その瞬間と同時に、呟いた。明日になれば、またね は言えなくなってしまう。胸の中に黒い靄がかかったように、苦しくなった。手を振り返せない。



足が固まって、動かなくなってしまった。









やっと分かったのだ。



この駅で、きっと私は、
彼に会う最期の機会を 待たなくてはいけない。




この日二番目の電車が来る前の



「 電車が参ります。危ないですので、黄色い線の内側まで下がってお待ちください 」



そんなアナウンスが、胸を締め付けるようだ。




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ねむい(プロフ) - ONEさん» ひいいいそこまで言っていただけるとは本当に嬉しい限りです、、恐縮極まりないです…(?)この後も、どうぞよろしくお願い致します…! (2018年1月9日 22時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
ONE - グッスン、グッスン(泣いてる、、) だぁぁぁぁ感動したぁぁぁぁ。何!?この悲しく切ないラブストーリーは!?。泣き過ぎて鼻水がでるぅぅぅ \( ^ ○ ^ )/オワタ。 (2018年1月9日 14時) (レス) id: c55778ed91 (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - 鶴永ルアさん» とても嬉しいコメントありがとうございます。頑張らせていただきます。よろしければこの後も、宜しくお願い致します! (2017年12月31日 14時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
鶴永ルア(プロフ) - 凄く感動しましたー!続きを早く読みたいです!!応援してます、更新頑張ってください(*´`) (2017年12月31日 14時) (レス) id: 51a0d5722b (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - 理音さん» ありがとうございます。細かい台詞まで、そして綺麗と言っていただき本当に嬉しいです。色々伏線立てまくってるのでよろしければこの後もよろしくお願い致します! (2017年12月30日 12時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ねむい | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年12月27日 21時

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