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夜半/2 ページ45





「 きっと私の異能のこと全部とは云わず知っているだろうから、演技なしで話すね。私は“川端A”なんだし 」

「 ははははは!君は実に興味深いな、そのまま娘の振りをしていれば全て丸く収まったのかもしれないのに 」


唇から血が滴る。さっき軽く殴られて口の中が切れてしまったらしい。今のおじさまから明確な殺意は感じられないから、大丈夫だろうけど。

私は今、モビーディックと呼ばれるヨコハマの空に浮く大きなくじらさんの胎内にいる。一作書けそうだな。


「 というか、さっき手錠をかけたはずだろう?もう外してしまったのか君は 」

「 え〜だって、自由にいたいタイプのAなので…生憎解鍵術は教え込まれてまして 」


でもそんなこと云われたら照れますなーと頭を掻くと、おじさまは愉快そうに笑った。うむ、愉快な人でなにより。あ、ちょっとうるさいけど


「 それよりおじさま、私をどうするおつもり?場合によっては対立しかねないよねえ 」

「 さて、どうしたものか…俺としては君たちとの対立は避けたい 」

「 まあもう遅いけどねー、私を人質に取った時点でさ。マフィアは私の“家族”だから 」

「 と云っても君は態と人質に取られたんだろう? 」

「 さあ? 」


丁度暇そうなので、エリスちゃんに秘密で持ってきたクレヨンを出す。ああ、もしこの任務から戻れたらエリスちゃん怒るだろうなあ。

おじさまの部屋に落書きを施していく。白い壁って何か描きたくなるよね。みたいな私の思想で小さい子のお母さんは苦労するんだろうな御免なさい。


「 おじさま、本当の目的は何なの? 」

「 俺のか?このヨコハマに眠ると云われるある“文学書”を見つけることだ。書いたことが、全て本当になると云われている幻の文学書 」

「 ああそれ知ってる、都市伝説だと思ってた。それで? 」


「 _____君を異能ではなく、本物の俺の娘にする 」


ははははは!とおじさまの笑い声が響き渡る中、暫く呆然としてしまった。私を、私の映し出す幻影を、永遠に私の顔に縫い付けたままにする。綻びひとつないように、その“精神”まで。


「 え。嫌だけど 」

「 だろうな、だから君をこのモビーディックで無理矢理祖国に連れ帰る 」

「 え?私の話聞いてた?嫌だ_____ 」


突如首の後ろあたりに衝撃が走って、脳が揺れた。目の前が徐々に暗くなっていく。やばい_____


「 すまないな、カワバタ君(プリンセス)。少し眠っていてくれ 」




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ねむい(プロフ) - イチゴプリンさん» いつもありがとうございます、本当に励みになります、、!これからも何卒宜しくお願い申し上げます! (2018年4月2日 12時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
イチゴプリン(プロフ) - ねむいさんの作る作品はとっても面白くて大好きです!これからも更新頑張ってください!応援してます! (2018年4月1日 13時) (レス) id: 645f74247e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ねむい | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年3月27日 16時

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