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ナイト・キャップ・カクテル/3 ページ38





「 おー!お手柄中也くんお帰り! 」

「 …今日は何してたんだよ 」

「 Aさんに遊んで貰ってた!そういう中也くんは探偵社の隠れ家を突き止めたんだって?それに刺客に立候補ときた、凄いねえ褒めてあげるよ 」

「 手前の上司は俺だからな 」


黄色い雑誌を捲りながら、川端は片手で葡萄酒の瓶を引き寄せた。コポコポと音を立てて注いで、置いてあったカクテルと一緒に中原の方へスライドさせる。


「 はいご褒美。冷やしすぎると美味しくないって前云ってた 」

「 手前の割には気がきくじゃねえか 」


被っていた帽子を川端の頭に乗せ、カチャカチャと音を立ててベルトを外した中原は、川端が赤い顔で少し飛び跳ねるのを横目で見て笑う。


「 中也……お着替えは互いの見えない所でって云ってるでしょ 」

「 あァ?抑も勝手に居候してんのはAだろうが 」


そう云うと中原はクロスタイを外し、ワイシャツのボタンを一つずつ開けていく。川端の白い頬は反比例するかの様に赤く染まっていく。彼等の今日の仕事は終わりらしい。


「 中也は酔うと面倒臭いから、程々にしてね 」

「 そんな赤い顔で云われても説得力の欠片もねェよ。酔ってるのは手前の方だろ 」

「 確信犯じゃん……本当に早く釦閉めてよ 」


まだ呑んでもいないのに真っ赤な川端を笑いながら、中原は置いてあった服を着た。川端は漸と息を吐いて、葡萄酒を口に入れることが出来た。


「 ち、ちゅうや、これ…… 」

「 あぁ、餓鬼にはまだ早ェな 」


かなりの強いアルコールに、思わず川端は中原に寄り掛かる。御免と云って体勢を戻そうとするも、優しく頭を押されて、中原の脚の上に倒れた。


「 ……矢ッ張り確信犯じゃん… 」

「 そうかもなァ。でも偶には俺に甘えてもいいんじゃねえの 」

「 ちゅうやには100ねんはやい 」

「 惚けてきてるぞ?まァいい、太宰の野郎に邪魔されたこの間の続きだからな 」


川端は脳が熱くなるのを感じた。心臓から流れる血の量が多くなったようだ。


「 Aさん、自分のこと大好きだったから…わたしの“精神操作”がうまく効いちゃったみたい。最近は相手の“精神操作”にも凝っててね……ねえ中也 」

「 ……A 」


「 わたしもう、こわい 」


温かいものが額に触れて、川端は眠りの底に落ちる。


『 優しいね、中也 』


記憶の奥から響く声に中原中也は唇をゆっくりと離し、川端Aの前髪をかきあげて寝酒にとカクテルを飲み干した。


「 …優しくなんてねェよ 」



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ねむい(プロフ) - イチゴプリンさん» いつもありがとうございます、本当に励みになります、、!これからも何卒宜しくお願い申し上げます! (2018年4月2日 12時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
イチゴプリン(プロフ) - ねむいさんの作る作品はとっても面白くて大好きです!これからも更新頑張ってください!応援してます! (2018年4月1日 13時) (レス) id: 645f74247e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ねむい | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年3月27日 16時

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