検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:46,924 hit

甘さと苦さの隙間/2 ページ24





『 もしもし?……また首領ですか!ああもう、いい加減部屋に行きますから!…はい、はい!すみませんでした!てかなんで幹部でもない私に首領の端末の番号を……すみません、なんでもありませんってば。だからもうその話は無しでお願いします。

………矢ッ張り、貴方にも全てお見通しで。…にも?いえいえ、こっちの話ですよ。

では………“ 誘 拐 ”にはあの子を使いましょうか。私は参謀ではありませんから詳しくは其方にお任せしますけど。 』







太陽が雲に隠れてしまった。平等に照らされなかった人々は怪訝そうに天の様子を窺っている。

上を見上げる人々の間をすり抜けて、道を通っていった。時折肩に当たる人に軽く謝ったが、相手は顔すら見ていないから、其れが指名手配犯だなんて思わないだろうな。

名前も知らない人が呟いた。「 今日は曇りか。雨は降るのだろうか 」

曇りだからと雨が降るわけではないよな、と笑った私はまた一歩足を進めた。悪も正義も同じで、悪だからと悪いことをするわけではない。正義だからといいことばかりするわけではなく、世の中は選択で溢れているのだと思う。

“ お前には悪も正義も変わらない ”____彼の人の言葉はその通りだ。彼奴にも、私にも当てはまる言葉なのだと思う。確かに表裏一体な其れ等が区別されるのは、矢張りこの道行く人々の偏見なのだろう。

ぽつ、ぽつと頰に粒が乗った。涙か?なんて思ったけれど、ポート・マフィアの中で私は散々“ 血も涙もない女 ”と呼ばれていた。勿論人間であるので血も涙も通っているのだが、これは涙の訳がないと自分でもわかっている。

街行く人の予言通り降り出した雨粒は、私の足音を紛れさせてくれた。ああ有難い、此れでもう私の正体を知る人がいなくなる。



____少し前に、背筋の伸びた背中が見えた。
同じ所へ向かおうとしているその人に追いつくこともせず、濡れながらも歩く。
雨は先程よりも少しだけ強くなったが、歩けない程ではない。

黒い髪を見つめていると、何故か胸の中に穴が空いた様な気持ちになる。その背中を追いかけるのは何度目だ、数えるのも忘れるほど其れは多かった様に感じる。

顔の横を喧騒が通り過ぎて行く。ちらりと見遣れば笑い顔を称えた女の子がお母さんと手を繋いで歩いていった。幸せそうなその笑顔は、いつこの街の闇に気がつくのだろうか。


前に向き直ると既にその黒髪は姿をくらましていた。遥か前を見つめても、何処にも存在しない。


甘さと苦さの隙間/3→←甘さと苦さの隙間/1



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (48 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
78人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ねむい(プロフ) - イチゴプリンさん» いつもありがとうございます、本当に励みになります、、!これからも何卒宜しくお願い申し上げます! (2018年4月2日 12時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
イチゴプリン(プロフ) - ねむいさんの作る作品はとっても面白くて大好きです!これからも更新頑張ってください!応援してます! (2018年4月1日 13時) (レス) id: 645f74247e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ねむい | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年3月27日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。