幕が上がり、誰一人居ない/3 ページ22
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「 人虎のしたことも、芥川のしたことも、所詮は独断でしょう?……敦君は芥川を見かけたら逃げろ、とでも言われてたんじゃ? 」
「 …… 」
答えは帰ってこない。敦君は異能力の反動で眠ったままだし、太宰も何故それを、なんて聞くような輩ではないことは重々承知だ。
「 ______それの何処が正義なの? 」
正義のために、人を殺していいのか。答えは 否 であろう。そうしたら彼方も悪でないか。そんなことを考えたら“ 何故対立しているのか ”という真理に辿り着く。
数え切れないほどの人間を葬ってきた太宰が、完全な善人になったといえるのだろうか。それも答えはきっと、 否 である。
芥川をちらりと見れば驚いたかのような顔で静止している。言い返してくるかと思ったが、予想をはるかに上回ったためか息をしているのかさえわからないくらいに止まっていた。
「 この街に、正義なんてものは存在しない 」
太宰が光に染まってしまった、今は。私の目の前に真意を教えてくれるひとなんて現れないし、生憎ろくに教育も施されて居ない。
「 何が云いたいんだい? 」
「 んー?何だろうね、取り敢えず太宰、チョコレヰト買ってよ 」
「 ええ、嫌だよ私、今所持金少ないもの 」
「 じゃあその額全部使う勢いで行こう 」
「 _____川端さん 」
太宰と呑気に話していると、背後からソプラノの声が飛んできた。高い声なのに重々しく感じる其れは、どうやら樋口ちゃんから発せられたものらしい。
「 ____貴女の異能力は、何なんですか? 」
「 私? 」
「 …はい、川端さんの… 」
少し間をあけてから、口を開く。
「 さぁ? 」
「 ッ、貴女は何時もそうやって、 」
「 止めろ樋口、無駄だ 」
「 えぇ〜酷いな芥川!報告書は現場にいた一応上司の私が書かなきゃいけないんだからもっと労ってよね 」
なんて軽口を叩いていると、太宰は立ち上がり、すぐ横を通ろうとしていた。
「 ______明日の2時半、此処で 」
「 ………手土産にチョコレヰト買ってきてよね 」
なんだかんだ約束は守る男である。今回の戦闘で出た怪我人を担ぎ、光の中へと向かって行く後ろ姿は あの時と同じように酷く眩しかった。
「 ____正義、其れが探偵社の独壇場だとしても、未だ幕が開いても誰もいないのが現状だ 」
正義とは何か。彼奴は、私にとっての正義だった。
幕が開いても誰もいない。未だ全員が客席にいる。其れは果たして、喜劇か、其れとも悲劇だろうか。
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ねむい(プロフ) - イチゴプリンさん» いつもありがとうございます、本当に励みになります、、!これからも何卒宜しくお願い申し上げます! (2018年4月2日 12時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
イチゴプリン(プロフ) - ねむいさんの作る作品はとっても面白くて大好きです!これからも更新頑張ってください!応援してます! (2018年4月1日 13時) (レス) id: 645f74247e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねむい | 作者ホームページ:
作成日時:2018年3月27日 16時