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れい、れい、ぱんぱん、れい。

合わせてるのわざと?って聞いたらわざとって笑いながら答えた。当たり前は当たり前に巡って来て、当たり前に去って行く。また訪れる日を明日じゃないか、明後日じゃないか、なんて待ちわびて。

底に小銭が落ちる音がして、控えめに鈴が鳴った。君は私の後に豪快に鈴を鳴らしてみせた。
あんな音が鳴るんだって、ちょっと吃驚したけれど、君は得意そうに微笑んで目を瞑ってみせた。あんまりお参りになんて来たことなかったから、緊張して君の真似をして目を瞑った。どれくらいの時間祈っていればいいのかとか、どのくらいの量お願いしていいのかとかわからなかったけれど、なぜか“ 住所を言っておくと神様が叶えてくれる ”なんてことだけ知っていたので、丁寧に空っぽの部屋の住所を添えておいた。

もう、なにもかも、空っぽじゃないのかもしれないけれど。汚いものなのか綺麗なものなのか、さっぱりわからないうちに全部君が埋めてしまったような、そんな気がしている。でも綺麗さなんていっそどうでもよくて、私は今、君が埋めてくれた幸せに頭まで浸かりたいだけ。


「 A 」


もう既にお願い事を終えて暇を持て余していた朔間凛月は、まだお願い事をしているにもかかわらず私に声をかけて来た。仕方がないという風に装って手を合わせるのをやめたが、正直なところ何からお願いすればいいのかという迷いがあったために時間がかかって後に引けなくなってしまっただけなのだが。


「 …なあに 」

「 ふふ、お誕生日おめでと〜う 」

「 わっ 」


目の前にいろが広がる。

その彩にピントが合っていて、奥にはぼかされた君の笑顔が見えた。ぽかぽかと晴れていて日の当たるそれらはもう何もかも完璧で、この瞬間はもう繰り返されないんだと思うとなんだか悲しくなってしまった。


「 花? 」

「 そうだよ 」

「 どこで摘んできたの 」

「 そこらへんに生えてたやつとってきたの 」


名前もわからないその花たちに私情を挟んで名前をつけるなら、それは 結び切り なんてネーミングセンスのかけらもない名前になっていたことだろうと思う。もう、なにもかもカッコつけることができなくなってしまったこの世界で生きるのが、こんなに楽しくて幸せなことだなんて。


「 ……ふふ、凛月らしいや、 」


誕生日はまだ、二人とも明日なんだけどね。

世界の隙間に咲いていた名前も知らない花をこの手に抱えた時、私はなんだかどうしたらいいのかわからなくなって、頬を伝うものを止めることができなかった。


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フラッペ - ねむいさん» りっちゃんはいいですよね(^^)独特な雰囲気というか無気力で可愛らしいというか……でもライブではきちんとする所、好きです。更新の方は細かく繊細に書かれているのがねむいさんの作品の良いところですので、自分の思うがままに書いていただければ幸いです……♪ (2018年8月22日 1時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - フラッペさん» ありがとうございます。フラッペさまからコメントをいただくたび、有難いという気持ちで胸がいっぱいになります。お気付きかとは思いますが、私も朔間凛月が一番の推しです。しかし推しほど書くのが難しい!精一杯尽くしていきたいと思いますのでよろしくお願いします! (2018年8月20日 10時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ - 新作おめでとうございます(^^)推しのりっちゃんなのでとても嬉しいです……!!もう一話目で「好き」と口からポロりと出てしまいました。ホントにこの作品の続きがむちゃくちゃ気になります。ねむいさんの事応援してます♪ (2018年8月18日 21時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ねむい | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年8月15日 23時

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