検索窓
今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:14,746 hit

31 ページ31





「 意味わかんないよ、あんたはあんたでしょーが 」


何故か苛立った顔をしている彼女を前に、俺は何も言うことができなかった。


高校生の頃だったと思う。彼女を忘れようと他の子を好きになった途端、胸に空いた穴に飛び込んでくるかのように現れたのは髪を短く切り揃えた彼女だった。
ラフな格好に丸眼鏡をかけて、シフォンケーキみたいな髪色を靡かせて。学校に行っていないと知ったのは高校に入学してすぐだったけれど、気まずくて連絡もできず、というか連絡がつかなくて、全く関わりを持たずに日々を過ごしてきた。そんな中、彼女は久しぶりの再会に何も感じていないというような顔で歩み寄ってきた。もしかしたら後ろは崖だったのかもしれないと思うほどに、ゆっくりとした足取りで歩み寄ってくる彼女と目を合わせたまま、そこから一歩も動くことができなかった。

そのころ、なんというか、学院はぐちゃぐちゃで、俺も無論ぐちゃぐちゃだった。伸びてくる手はいつも俺を通して兄者を見ていて、“ 朔間凛月 ”を見ている人なんかいなかった。悲しいわけではなくて、やっぱり寂しかった。悔しかった。幼馴染は察していたと思うけれど、それをぶちまけて八つ当たりするなんてできるわけなくて、ぐちゃぐちゃに崩れていくことしか出来ない。そんな時に、まるで見計らったかのように、俺に手を伸ばしたのは彼女だった。


_____Aならいっか。


そんな簡単な心構えで、感情を剥き出しにして、言いたいことを全部吐き出した。その間彼女は息をしているか心配になるほどに静かだった。きっと俺は、始終酷い顔をしてた。








「 意味わかんないよ、あんたはあんたでしょーが 」


その言葉が本気だったのかわからないけれど、ただただ彼女らしくて、もっと胸の穴を抉られる。


「 俺は俺じゃなかった 」

「 凛月は凛月だってば 」

「 だから 」

「 だからじゃないよ、凛月はお兄ちゃんのことが嫌いなの? 」


嫌いじゃない。
嫌いなんかじゃない。
でも、どうしても、悔しかった。比べられるのが、馬鹿にされるのが、がっかりされるのが。

あんたになりたかった。
何でも振り切れるようなあんたに。
でもやっぱりなれなかった。俺たちはいつまでも鏡を見ていて、お互いがお互いのようになれない。だから余計、あんたに憧れる。


「 …嫌いだよ、あんたと同じくらいね。あーあ、ほんと羨ましいな 」


そんなこと言うつもりなかったし、図星すぎた彼女の言葉に悔しくなっただけだったのに、彼女は何も言わずに俺の頬を張った。



32→←30



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (37 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
43人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

フラッペ - ねむいさん» りっちゃんはいいですよね(^^)独特な雰囲気というか無気力で可愛らしいというか……でもライブではきちんとする所、好きです。更新の方は細かく繊細に書かれているのがねむいさんの作品の良いところですので、自分の思うがままに書いていただければ幸いです……♪ (2018年8月22日 1時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - フラッペさん» ありがとうございます。フラッペさまからコメントをいただくたび、有難いという気持ちで胸がいっぱいになります。お気付きかとは思いますが、私も朔間凛月が一番の推しです。しかし推しほど書くのが難しい!精一杯尽くしていきたいと思いますのでよろしくお願いします! (2018年8月20日 10時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ - 新作おめでとうございます(^^)推しのりっちゃんなのでとても嬉しいです……!!もう一話目で「好き」と口からポロりと出てしまいました。ホントにこの作品の続きがむちゃくちゃ気になります。ねむいさんの事応援してます♪ (2018年8月18日 21時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ねむい | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年8月15日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。