すのさん短編集!

母は偉大なり 佐久間家 ページ46

このお話は全て阿部ちゃんsideです。



2020年5月


第2日曜日


母の日



俺は別に何も期待なんかしてない

12歳の息子、蓮

蓮は大介に似て少し、ほんとに少しだけ抜けてる

少しだけのはず、ほんとに

7×9の積が7×8の積よりも減るけど、少しだけ



そんなことは置いといて…

俺が期待していないのは蓮がアホだからじゃなく


俺も大介も蓮に『母の日』と言うものを教えていないからだ。


正確に言うと母の日自体は知っているけど母の日がいつなのかを知らない、なんてったって小6男子、知らなくてもしょうがない。



目「ママ！ケーキ！」


「ケーキ？」


目「うん！ケーキ！」


さっき言った通り主語がないあたりやっぱり蓮はアホだ、可愛いけど。


「れん？ケーキが何？ママいつも主語ないとわかんないよって言ってるよね？」


目「康二くんが、今日は母の日だよーって言ってたから！」


「うん、で？なんでケーキ？」


目「だからね、昨日パパにママに何したら喜んでくれる？って聞いたの」


「そしたらパパが『蓮がママとやりたい事やってみたら？』って言ったからケーキ！」


なるほど、大介の案か。

どおりで発言がぶっ飛んでるわけだ、納得。


「ケーキ作るの？蓮、ごめんけどママケーキ作れないよ？」


そうなのです。

私、佐久間亮平、料理得意じゃないんです。




目「ママいつも作ってくれるよ？」


「いつも？」


目「前は〜、康二くんとまいちゃん遊びに来た時に作ってくれたよ〜」



「あぁ〜！ホットケーキね！」


目「そー！それ！ホットケーキ！！」




料理が出来なくても少しでもママをしたくてお隣の真都くんと康二くんが来た時はふわふわホットケーキを披露するのが定番になっていて


まさか蓮が一緒に作りたいなんて言うと思ってなかったからそれだけで嬉しくて


しかも母の日について考えてくれたことに驚いて


泣きそうで思い切り抱きしめた。

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