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?「おい…起きろ!」
翠「ん…、」
聞き覚えのある声が聞こえて目を開けると、其処にはいるはずのない人物がいた。
翠「中原、さん、」
掠れた声で名前を呼ぶと、中原さんは優しく手を握ってくれた。
私は、今までの記憶を少しずつ思い出す。
中原さんと初めて会った路地裏に来た後、苦しくなって倒れてしまったんだ。
中「俺、あの時の事全部調べたんだ!手前は何も悪くねえ事が分かった!本当にすまねえ!」
中原さんは深く頭を下げた。
ふふ、やっぱり中原さんは賢いや。
私が隠してた事…全部ばれちゃったんだ。
翠「中原さんは…悪くない、です。私が勝手に、嘘をついて…がはっ、」
中「おい!何処か悪いのか!?」
突然激しく咳き込んだ私を見て、中原さんが心配そうに聞いた。
私は、自分がクローンで偽物の異能者だという事、もう寿命がない事を全て話した。
全て聞いた中原さんは、黙って私を抱きしめた。
翠「中原さ、」
これは…幸せな夢なんだろうか。
中原さんが…私に触れている。
これまでずっと死にたいと思い続けてきたけれど、今日初めて…死にたくないと、まだこの人の隣で生きたいと思ってしまった。
こんな事、許されないのに。
翠「なかは、さん、私…まだ、生きたい。やりたい事、沢山、あるの…に」
街ゆく子供達が、ずっと羨ましかった。
可愛い服を着て、美味しい物を食べて、色んな場所に行きたかった。
大好きな人と、共に生きたかった。
でも、出来ない。
翠「私…生まれ変わ、たら、普通の人になりたい…、普通に、生きたい、」
中原さんは、綺麗な青い目を向けてずっと頷いてくれていた。
その目があまりにも綺麗すぎて、私は涙が止まらなくなった。
翠「中原さん、は、私の相棒で…良かった?」
泣きながらそう口に出す。
私は、貴方に嘘をついてばかりだったから。
中「ああ。Aが相棒で本当に良かった。」
短くてぶっきらぼうな言葉だったけど、私には充分すぎた。
初めて、名前を呼んでもらえた。
嬉しくて笑ってしまったのも束の間、更に息が苦しくなり再び咳き込んだ。
中原さんは、もう慌てた様子は見せずに、ただ私を抱きしめ続けた。
中原さんの匂いが私を包む。
翠「あり、がとう、あり、がと」
今までありがとう。中原さん。
もしも生まれ変わる事が許されるのなら…
もう一度だけ、貴方の隣で笑ってもいいですか?
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文スト - こんなに素晴らしい作品を作っていただきありがとうございます。とても感動いたしました。特に中也さんのありがとうな相棒が泣けました!!こんなに感動を与えてくれる作品はなかなかありません。これからも頑張ってください!!応援しています!! (2020年4月4日 0時) (レス) id: a01fb1d9df (このIDを非表示/違反報告)
落葉 - とても。良かったです。すみません、何かこう…もっと出したい想いがあるのですが言葉が上手く出てこず…でも本当にこのお話、好きです。このお話に出会えて良かった。 (2019年1月14日 23時) (レス) id: 86e3e2dd18 (このIDを非表示/違反報告)
藍色(プロフ) - ふとこの小説を見つけて読んでみると、とても面白くて引き込まれてしまいました!とても感動的な話をありがとうございます!夢主の過去と最期の時に涙しました…! (2019年1月4日 21時) (レス) id: 29bb7cf916 (このIDを非表示/違反報告)
夢ノ胡蝶(プロフ) - ミーシャ アルグさん» コメントありがとうございます!今でもこの小説を読んでくださる方がいて、コメントまで頂くことができて、嬉しい気持ちでいっぱいです…!本当に最後まで書いて良かったです。読んでくださってありがとうございました! (2018年7月7日 22時) (レス) id: 418ca22426 (このIDを非表示/違反報告)
ミーシャ アルグ - 感動しました~!!(ノ_・、)本当に面白かったです! (2018年3月7日 6時) (レス) id: 31eda759a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夢ノ胡蝶 | 作成日時:2016年8月28日 13時