57 翠の過去 ページ18
声のする方を慌てて振り返ると、複数の研究者が立っていた。
嘘…、
部屋に入った人で全員じゃなかったの?
私が驚いて立ち竦んでいると、一人の研究者が馬鹿にしたように笑って話しだした。
「会議を行っていた研究者から連絡が来たんだよ。クローンの一人が武器を持って部屋に入って来た…とね。」
…優兄ちゃんの目を盗んで助けを呼んだのか。
翠「でも…もう子供達は逃げてしまった。今更来たってもう遅い。」
私は震える声で反論した。
研究者に口答えしたのは、これが初めてだったからだ。
「ははっ、お前は私達がクローンが抜け出した時の為の備えすらしていないと思っていたのか!」
翠「…え、」
研究者達は、驚く訳でも慌てる訳でもなく、只々私の事を冷たい目で見つめていた。
「これを見てみろ。」
一人の研究者が、脇に抱えていたノートパソコンを開いた。
画面を見ると、この辺りの地形が記された地図の上で、沢山の赤い点が動き回っていた。
翠「これ、は…、」
「知らないと思うが、お前達の体の中にはGPSが埋め込まれているんだ。こうして脱走した時に、すぐに何処にいるのか特定できるようにな。」
翠「!?」
…そんな。
じゃあ…子供達がいくら遠くに逃げても、研究者達がいる限り何度でも連れ戻されるって事?
優兄ちゃんの作戦は…失敗してしまうの?
翠「…っ。」
そんなの…駄目だよ。
優兄ちゃんの作戦は…絶対に成功させる。
たとえ、どんな手を使っても。
翠「そんな事…させない。」
「ふっ、お前に何が出来る。人を殺す事しか能がない出来損ないが!」
その場にいた研究者全員に笑われてしまった。
そうだよ。
私は…人を殺す為に生まれてきた。
それならば、
翠「人を殺して大切なものを守れるのなら、私は喜んでこの力を使う!
異能力…神の見えざる手!!!」
せめて…何かを守る為に、この力を使いたいから。
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文スト - こんなに素晴らしい作品を作っていただきありがとうございます。とても感動いたしました。特に中也さんのありがとうな相棒が泣けました!!こんなに感動を与えてくれる作品はなかなかありません。これからも頑張ってください!!応援しています!! (2020年4月4日 0時) (レス) id: a01fb1d9df (このIDを非表示/違反報告)
落葉 - とても。良かったです。すみません、何かこう…もっと出したい想いがあるのですが言葉が上手く出てこず…でも本当にこのお話、好きです。このお話に出会えて良かった。 (2019年1月14日 23時) (レス) id: 86e3e2dd18 (このIDを非表示/違反報告)
藍色(プロフ) - ふとこの小説を見つけて読んでみると、とても面白くて引き込まれてしまいました!とても感動的な話をありがとうございます!夢主の過去と最期の時に涙しました…! (2019年1月4日 21時) (レス) id: 29bb7cf916 (このIDを非表示/違反報告)
夢ノ胡蝶(プロフ) - ミーシャ アルグさん» コメントありがとうございます!今でもこの小説を読んでくださる方がいて、コメントまで頂くことができて、嬉しい気持ちでいっぱいです…!本当に最後まで書いて良かったです。読んでくださってありがとうございました! (2018年7月7日 22時) (レス) id: 418ca22426 (このIDを非表示/違反報告)
ミーシャ アルグ - 感動しました~!!(ノ_・、)本当に面白かったです! (2018年3月7日 6時) (レス) id: 31eda759a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夢ノ胡蝶 | 作成日時:2016年8月28日 13時