約束 ページ10
意を決して目を瞑った途端、体が軽くなった。
「な〜んちゃって」
ふと悟さんを見ると、彼は定位置に戻りイタズラを覚えた少年のように笑っていた。
解放された体を正し、私は彼から距離を取って座り直す。
「い、いきなり何するんですかっ!」
「え〜、だってAにとって僕は初対面の男なんだろうけど、僕にとってはずっと付き合ってる彼女なんだよ。わかる?僕の状況」
「それは…その。私の記憶喪失が原因で恋人らしいこと出来ないのは、記憶のある悟さんにとってお辛いでしょけど…」
だからって、と続けたかった。
いきなり押し倒されて、怖い思いをして、なのにそれをナンチャッテと済まされるのは癪なのだ。
「ではお伺いしますが、悟さんと私の立場が反対だったらどう思いますか?」
「僕が記憶喪失で、Aが記憶のある恋人ってこと?」
「そうです」
「相手がAなら、変わらずすぐ好きになるよ。」
「いきなり、さっきみたいに押し倒されたらどうするんですか」
「ベッド連れてっちゃうかな。他の女なら首潰しちゃうけど」
即答。しかも
何も言えなかった。彼の腕力ならば女性の首など
「Aさ、もうお風呂入ろ」
「は、はい」
席を立つと、悟さんも当然のように席を立つ。
リビングを出ようとすると、その後を悟さんは着いてきた。
「…入ってきます」
「え?何で。一緒に入ろうよ〜」
「今朝初めてお会いした方とは入れません」
「初めてじゃないって!アイアム!ユア!ボーイフレンド!」
「初めましてっ!」
「ノー!話聞いて!」
「気持ち汲んで!」
「お預け食らってるこっちのセリフ!」
廊下を出て早足で歩くと、その後を巨体が追ってくる。
着替えの収納場所を教えてもらい、タオルや何やらワンセット手に抱えると浴室へと向かった。
その後ろを悟さんは着いてくる。
「シャンプーとか分からないでしょ!容器教えるからさ!あっお背中お流しするよ!僕結構上手いんだよ!大丈夫!変なところ触らないって!恐らく! 目隠ししながら入ろうか!恥ずかしいところ直視しないって約束するよ!タブンッ! せめて理性は保つから!出来ればの話だけど!」
脱衣場へ着くと、悟さんの方へ振り向く。
「じゃあ、待っててくれたら一緒に寝ます」と残してドアを閉じると、ドアの向こうから「へっ…」と気の抜けた声が聞こえた。
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松野星月(プロフ) - コメ失礼します!わー、心に来る。続きがますます気になりました!楽しみに待ってます! (2023年5月4日 16時) (レス) @page37 id: 7e5eb61c5c (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - コメント失礼します!すごく面白かったです!質問なのですが,この作品は完結でいいのですか?内容的に途中だと思うのですが…もし,続きを書く予定があるのなら続きみたいです!更新頑張ってください(^^) (2023年3月21日 14時) (レス) id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - 一般タコピーさん» 返信遅れてごめんなさい!コメントありがとうございますっっ!!身に余るお言葉ですがめっっっちゃくちゃ嬉しいです(/Д`;💕︎ 不定期になってしまいますが、更新頑張ります!- ̗̀( ˶^ᵕ'˶)b (2022年12月19日 13時) (レス) id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
一般タコピー - 神作品だ!作者様の文才が素晴らしくて一気に読んでしまいました!更新頑張ってください! (2022年12月15日 18時) (レス) id: e79aa4edc0 (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - あさん» 嬉しいです!!ありがとうございます!私も好きです!!!(唐突) (2022年12月13日 17時) (レス) @page36 id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のんのんた | 作成日時:2021年10月4日 4時