音 ー視点なしー ページ33
爪先がボタンに触れた瞬間、風が落ちてきた。
インターホンは、何故だか押せていなかった。確かに押し込んだと思ったのに。チャイムの音が聞こえない。
そして先程、男はぼとり、と音がしたのを聞いた。
自身の手に違和感を覚えた後、滲むような緊張が男の背中を這い上がった。
汗だくになった顔で、ゆっくりと床を見る。
「あっ」
靴元に、
冷たい汗が全身にどっと溢れ、青ざめた顔で震えた。
インターホンへ伸ばしていた手を見ると、人差し指があった所、付け根が赤丸になっている。刃物で落とされたような切り口だった。
「あっ…あぁ……」
そして、やっと理解が追いついた頃、鋭い痛みが走った。
「あ゛」
「黙れ。」
痛みに耐えかね、悲鳴を上げた口が一瞬で塞がれる。
背後に、誰かいるのだ。
男は手に握っていたナイフを、何度も後ろの者に突き刺した。しかし、そんなものではビクともせずに、ズルズルと引きずられて行く。同じ人間とは思えない力だった。
エレベーターの影まで行くと背中を壁に叩きつけられ、首を掴まれた。
「ぐっ、あ」
「よう糞野郎。何しに来たんだ?」
五条だった。
家入から「絶対に会うな」と忠告を受けた人物。
会えば、確実に生きて戻れないとも。
男はそんな言葉を大袈裟だと鼻で笑った。
…しかし、今ではその忠告が重々と身に染みている。
「雇い主は?」
「あ…ぐ…」
「女か?」
「う、ひっ…」
「聞いてんのかよ。」
五条は、男の首を掴んだまま引き寄せると、再び壁に叩きつける。「うぐッ」と情けない声が出た。背中にジリジリと痛みが広がり、衝撃でナイフは床に落としてしまった。
何度も突き刺したのにも関わらず、何でこの黒マスク野郎は無傷なんだ。
男は化け物を見るような目で、五条を見上げた。
フーフーと肩で息をして、膝に上手く力が入らない。ガクガクと震える足で、必死に立つ。
どうしようもない恐怖に負け、次第に涙が溢れてきた。
その様子を見て、五条は笑った。
「泣くなよ、男の子だろお?」と陽気に挑発する。
「あ、う…」
「野郎の涙とか見たかねぇんだよ。さっさと言え。言わなきゃこのまま絞める。」
徐々に圧迫される動脈。
骨が軋む音が脳に響くと、男は意を決した様子で口を開いた。
「ぐっ…!女だ!家入、家入硝子って奴に頼まれたんだ!」
「あっそ。おつかれ。」
「ギッ」
グシャリ、と手中で首の骨を砕く。言えば解放するとは一言も言ってない。
868人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
松野星月(プロフ) - コメ失礼します!わー、心に来る。続きがますます気になりました!楽しみに待ってます! (2023年5月4日 16時) (レス) @page37 id: 7e5eb61c5c (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - コメント失礼します!すごく面白かったです!質問なのですが,この作品は完結でいいのですか?内容的に途中だと思うのですが…もし,続きを書く予定があるのなら続きみたいです!更新頑張ってください(^^) (2023年3月21日 14時) (レス) id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - 一般タコピーさん» 返信遅れてごめんなさい!コメントありがとうございますっっ!!身に余るお言葉ですがめっっっちゃくちゃ嬉しいです(/Д`;💕︎ 不定期になってしまいますが、更新頑張ります!- ̗̀( ˶^ᵕ'˶)b (2022年12月19日 13時) (レス) id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
一般タコピー - 神作品だ!作者様の文才が素晴らしくて一気に読んでしまいました!更新頑張ってください! (2022年12月15日 18時) (レス) id: e79aa4edc0 (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - あさん» 嬉しいです!!ありがとうございます!私も好きです!!!(唐突) (2022年12月13日 17時) (レス) @page36 id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:のんのんた | 作成日時:2021年10月4日 4時