どいつも こいつも -視点なし- ページ28
Aを見送ったあと、五条は黙々と料理を作っていた。
雑に鍋を引っ張り出し、水を入れると投げるようにコンロへ置く。入っていた水は多少零れたが、火を使えば乾くので気にせず他の作業を続けた。
その荒々しい手つきは、正に機嫌の悪さを表している。
彼女と一緒にいた時とは態度が一変し、まるで別人のようだった。
また雑に具材を包丁で刻んで、鍋に放り込む。ジャポジャポと低い音を立てて水が跳ねた。それも気にせず、上に蓋をして、中火につまみを合わせた後、15分後に弱火になるよう設定した。一人暮らしの経験がある慣れた手つきではあるが、やはり機嫌任せで荒々しい。
カウンターキッチンからゆったりとした足取りで出て、壁に手を着いた。右手で両目を覆い、ふぅうっと深く長い溜息をつく。
「あー、クソ。」
低く唸るように呟けば、白い歯をギリっと食いしばる。
思うままに物に当たると、彼の力では壊してしまうので安易に発散出来ない。五条はやるせない怒りを、黙って耐えるしか無かった。
Aが、僕に隠し事をしている上に、嘘をついた。
隠し事は禁止、と設けたルール。それを崩されたのだ。
そんな現状が、彼にはたまらなかった。
約束を破れば、彼女を自分が思うがまま好きなようにするとは言った、本気で実行しようと思った。無茶苦茶にしてやりたかった。でも、出来なかったのだ。
理由は単純に「嫌われたくない」から。
自分を見上げる目が、恐怖に染まっていたから。
欲望に
目を覆っていた右手から、ふと壁に設置されたモニターを見る。それはオートロックやインターホンが鳴らされた時、来客を映し出すもので。
録画機能がある。
五条はモニターに歩み寄り、壁に片手を着いた。彼の背丈では画面を覗くのに苦労するのだ。
ボタンを押して、メニューから録画視聴を選ぶ。
一番最新のものが映し出された、が。
「はっ、マジでさ…。」
五条は呆れたように短く笑った。
背景は真っ白だった。恐らく、紙か何かでカメラを覆い、テープで止められている。よって、訪問者は見えない。
一定時間の録画を終えれば、パッと画面が消えた。
「ッたく、どいつもこいつも…」
五条は後頭部をガシガシと乱暴にかく。
「まあいいや、後で慰めてもーらお。」
一つ楽しみを見出した彼は、弾むような声で言うと、またキッチンへと戻って行った。
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松野星月(プロフ) - コメ失礼します！わー、心に来る。続きがますます気になりました！楽しみに待ってます！ (2023年5月4日 16時) (
レス) @page37 id: 7e5eb61c5c (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - コメント失礼します！すごく面白かったです！質問なのですが,この作品は完結でいいのですか？内容的に途中だと思うのですが…もし,続きを書く予定があるのなら続きみたいです！更新頑張ってください(^^) (2023年3月21日 14時) (レス) id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - 一般タコピーさん» 返信遅れてごめんなさい！コメントありがとうございますっっ！！身に余るお言葉ですがめっっっちゃくちゃ嬉しいです(/Д`;💕︎ 不定期になってしまいますが、更新頑張ります！- ̗̀( ˶^ᵕ'˶)b (2022年12月19日 13時) (レス) id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
一般タコピー - 神作品だ！作者様の文才が素晴らしくて一気に読んでしまいました！更新頑張ってください！ (2022年12月15日 18時) (レス) id: e79aa4edc0 (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - あさん» 嬉しいです！！ありがとうございます！私も好きです！！！(唐突) (2022年12月13日 17時) (レス) @page36 id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：のんのんた | 作成日時：2021年10月4日 4時
