脱力 ページ27
悟さんは腕を振り上げた。
殴られると思って、咄嗟に目を瞑る。痛みの覚悟をした訳ではない。ただ、反射的に目をギュッと閉ざした。
けれど、暗闇の中降ってきたのは拳ではなく「なぁんだ」と気の抜けた声だった。
腹部に感じた重圧感がスっと消える。
恐る恐る目を開けると、悟さんは振り上げた手で後頭部をかいていた。
「今日、祥子からここのエレベーターの匂いがしたからさ。」
「エ、エレベーター…？」
「そっ。フロントの人が臭いに気を使う人でさ。芳香剤とか置いてんの。乙女だよねぇ、イカついオッサンなんだけど。」
「は、はあ…。」
いつもの陽気さに戻っていた彼に、曖昧な返事をする。
「ごめんね、怖がらせちゃって。」
「い、いえ…。」
とろけるような安心感を覚えた。
良かった。彼女も私も、これできっと無事だ。
「痛いところある？」
「大丈夫ですよ…。」
彼はゆっくりと私から退くと、キッチンへ向かう。どうやら、これから夕食を作るようだ。
「A、先に風呂入っておいでよ。」
「あ、分かりました」
「それか片足しか使えないと不便だし、僕と一緒に入る？」
「いえ、大丈夫です」
「着替え手伝おうか？」
「結構です。」
「…服でも準備しようか？」
「本当に大丈夫です。」
「即答やめて」
「でも、何かあったら呼ぶので、助けに来てくださいね。」
「マジ？ 脱いで行こ。」
「脱ぐ前に助けに来てください。」
ピシャリとドアを閉めた。
ふう、の一息つく。
そして、廊下に出ればやはり�爐△糧皚瓩�ある方へと視線が向いてしまう。
なぜ、こんなにも気にしてしまうのだろうか。
「早く入ろ…。」
壁を伝って、片足で跳ねるようしてに進む。
松葉杖でもあれば良いのにな。後で悟さんに頼んでみよう。あと病院に行かせてもらうように、今度こそちゃんと言ってみよう。流石に体がおかしい。
体の不調があれば、アクションが欲しいと硝子さんは言っていた。アクション…。アクションって一体どうすれば良いの…。
収納を開けて、服を取り出す。
足が使えなくなった分、ズボンだと着替えに困難だと思ったので、頭からすっぽり着てしまえば完了する、裏生地のワンピースを選んだ。
片足での移動は体力の消耗が激しく、脱衣所に着いた時には既に息が上がっていた。足一本で暮らすには、この家は広すぎる。
「はあ、疲れた…。」
精神的にも、身体的にも。
とりあえず、お風呂でゆっくりしよう。
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松野星月(プロフ) - コメ失礼します！わー、心に来る。続きがますます気になりました！楽しみに待ってます！ (2023年5月4日 16時) (
レス) @page37 id: 7e5eb61c5c (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - コメント失礼します！すごく面白かったです！質問なのですが,この作品は完結でいいのですか？内容的に途中だと思うのですが…もし,続きを書く予定があるのなら続きみたいです！更新頑張ってください(^^) (2023年3月21日 14時) (レス) id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - 一般タコピーさん» 返信遅れてごめんなさい！コメントありがとうございますっっ！！身に余るお言葉ですがめっっっちゃくちゃ嬉しいです(/Д`;💕︎ 不定期になってしまいますが、更新頑張ります！- ̗̀( ˶^ᵕ'˶)b (2022年12月19日 13時) (レス) id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
一般タコピー - 神作品だ！作者様の文才が素晴らしくて一気に読んでしまいました！更新頑張ってください！ (2022年12月15日 18時) (レス) id: e79aa4edc0 (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - あさん» 嬉しいです！！ありがとうございます！私も好きです！！！(唐突) (2022年12月13日 17時) (レス) @page36 id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：のんのんた | 作成日時：2021年10月4日 4時
