家入硝子からの手紙 ページ25
ズルズルとリビングへ向かうと、ソファに腰を落ち着かせた。
「いえいり、がら…しょうこ?」
ほんの一瞬、ガラスと読みかけてしまったが、そこに書かれたのは、家入硝子さんの名前。
女性の名前なので、浮気なのではと思ったが「五条悟の友人だ」と既に一行目に強調されていた。
——私は、五条悟の高校時代からの友人の者だが、この手紙は彼ではなく君宛に書いている。
くれぐれも、ここの内容は五条を含め、誰にも見せるな。読み終わった後は必ず、ただゴミ箱に投げ込まずに燃やしてほしい。
五条から薬を飲まされていると聞いたが、何か少しでも不調はないか? もし何かあれば、また明日この時間に来るので、会うことは出来ないが何かアクションがほしい。
以上が手紙の内容だった。
こんなに丁寧に体調を心配されるほどの薬なのか…と。
まさか、と良からぬ考えが脳裏に浮かぶ。
この足が動かないのって、あの薬のせいなんじゃ…。
深く考え過ぎなのではとも思ったけれど、少しでも不調があればアクションが欲しいと書いてある。
何が何だか頭が追いつかなくて、取り敢えず明日の彼女からの訪問を待つことにした。
手紙は燃やして欲しいとの要望があったので、キッチンのガスコンロで炙ることにした。
つまみを回せば、カチチと短く音が鳴って火がついた。
紙をかざすと隅から黒く染まって、赤い火がみるみると燃え広がってゆく様子を呆然と眺めた。
——…様に何をしたんだ、この
上の空を漂う意識の中、見知らぬ怒号が響く。
どこかで聞いたことがあるような、ないような、曖昧なものではあるけれども。…あれは、何だったかな。
「あちっ」
指先まで伝った火がジンと沁みて、指を弾かれた。
紙はすっかり黒焦げになって無惨に縮んでいる。
念には念をと思って、ゴミ箱に入れると、そのまた上にゴミを重ねる。誰にも見つからないように。
『目とか合わせんの?』
『体とか触んの?』
『ねぇA。僕以外にそんなの許すの?』
『僕そういうのムリ。Aが他の人と話すとか』
…彼女が何故ここまでするのか、何となく分かった。
ヨロヨロとキッチンに立って流水で手を冷やすと、冷たい水に少しばかり冷静になれた気がした。
火に触れてしまった人差し指と親指は赤くなっていて、チリチリと痛い。
「足、足のこと、言わなきゃな…。」
空いた左手でスマホを取り出すと、悟さんとのトーク画面を開いた。
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松野星月(プロフ) - コメ失礼します!わー、心に来る。続きがますます気になりました!楽しみに待ってます! (2023年5月4日 16時) (レス) @page37 id: 7e5eb61c5c (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - コメント失礼します!すごく面白かったです!質問なのですが,この作品は完結でいいのですか?内容的に途中だと思うのですが…もし,続きを書く予定があるのなら続きみたいです!更新頑張ってください(^^) (2023年3月21日 14時) (レス) id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - 一般タコピーさん» 返信遅れてごめんなさい!コメントありがとうございますっっ!!身に余るお言葉ですがめっっっちゃくちゃ嬉しいです(/Д`;💕︎ 不定期になってしまいますが、更新頑張ります!- ̗̀( ˶^ᵕ'˶)b (2022年12月19日 13時) (レス) id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
一般タコピー - 神作品だ!作者様の文才が素晴らしくて一気に読んでしまいました!更新頑張ってください! (2022年12月15日 18時) (レス) id: e79aa4edc0 (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - あさん» 嬉しいです!!ありがとうございます!私も好きです!!!(唐突) (2022年12月13日 17時) (レス) @page36 id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のんのんた | 作成日時:2021年10月4日 4時