はじめまして ページ2
ドアノブが回される音に思わず目を開けると、再び頭痛がじんわりと広がる。
扉がゆっくりと開く音を背中で聞いた。
きっと、この家の主だ。私をここに運んだ人だ。
この場合、お礼をするのが道理だろう。
しかし、体を起こす以前に、寝返りを打って顔を向けることも困難なのだ。声を掛けるにしても、体を相手側へ向ける必要がある。今の私には難題だ。
どうして良いのかわからず、背中を向けたまま動くことが出来なかった。謂わば狸寝入りである。
フローリングをスリッパで滑らすような音が近付いてくると同時に、どうするべきかと半ばパニックに近い思考で考えた。
足音が近くなるにつれ、どんどん収拾がつかなくなっていく。
そして、すぐ背中まで来た気配に、今だっ！とヤケクソに腹を括る。
刹那、体の重心が僅かに傾いた。
その人はベッドに腰をかけたのだ。
驚愕のあまり、私は考える間もなく再び目を閉じてしまい、完全に挨拶のタイミングを逃した。
何でわざわざ私の眠るベッドに腰を掛けたのか、距離感を疑った。
いやいや、お年寄りの可能性もある。腰でも痛かったのか。
…だったら私をここまで運べるはずがない。
いやいや、もしかしたら他のご家族が私を運んでくれたのかも。
…だったらドアの向こうから他の人の声が聞こえてもいいはず。目が覚めてからずっと、誰の声も聞いていない。もはや気配すら感じられない。
ギシッとベッドが音を立てると共に、また背中に重心が傾く。手を着いているのだろうか。
�狠棒��瓩痢�低い溜息が髪へ降ってきて、思わず目を固く瞑った。
頬に冷たい何かが滑る。手だ。
私の額やら頬に着いた髪を、丁寧に耳へかけている。そして頬を撫で始めた。
見知らぬ人に体を触られている恐怖で、足の指をギュッと丸める。
薄く瞼を開け恐る恐る振り返ると、空色の瞳と目が合った。
「あれ？起こしちゃった？」
もう少し遊ぼうかと思ったのに、と青年はボヤきながら手を除ける。
息を飲むほどの美青年が、そこにいる。
恐ろしい程に顔立ちがいい。
黒のヒートテックから覗いた凹凸がハッキリしている骨格を見て、これは女の子一人くらい余裕で持ち上げそうだなぁと思った。
「おはよう、A」
重たい身を起こして、反射的に距離を置こうと後ずさってしまった。
窓に背中が当たって、逃げ道を絶たれる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 867人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
松野星月(プロフ) - コメ失礼します！わー、心に来る。続きがますます気になりました！楽しみに待ってます！ (5月4日 16時) (
レス) @page37 id: 7e5eb61c5c (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - コメント失礼します！すごく面白かったです！質問なのですが,この作品は完結でいいのですか？内容的に途中だと思うのですが…もし,続きを書く予定があるのなら続きみたいです！更新頑張ってください(^^) (2023年3月21日 14時) (レス) id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - 一般タコピーさん» 返信遅れてごめんなさい！コメントありがとうございますっっ！！身に余るお言葉ですがめっっっちゃくちゃ嬉しいです(/Д`;💕︎ 不定期になってしまいますが、更新頑張ります！- ̗̀( ˶^ᵕ'˶)b (2022年12月19日 13時) (レス) id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
一般タコピー - 神作品だ！作者様の文才が素晴らしくて一気に読んでしまいました！更新頑張ってください！ (2022年12月15日 18時) (レス) id: e79aa4edc0 (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - あさん» 嬉しいです！！ありがとうございます！私も好きです！！！(唐突) (2022年12月13日 17時) (レス) @page36 id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：のんのんた | 作成日時：2021年10月4日 4時
